ポーランド、右派政権に崩壊危機 党首後継争いも

2020/9/23 19:00
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ポーランドの最高実力者、与党「法と正義」党首のカチンスキ氏=ロイター

ポーランドの最高実力者、与党「法と正義」党首のカチンスキ氏=ロイター

【ベルリン=石川潤】強権政治を進めるポーランドの右派政権が崩壊の危機に直面している。動物の権利のための法案の採決で、穏健派と強硬右派の対立が鮮明になったことがきっかけだ。与党の最高実力者、カチンスキ氏(71)の跡目争いも絡み、ポーランドがさらに右傾化するリスクもじわり浮かんできた。

毛皮を剥ぐために動物を飼育することを禁じる――。対立の引き金となったのが、ポーランドの下院を18日までに通過した動物権利法案だ。猫好きで知られる最大与党「法と正義」のカチンスキ党首が主導したが、連立相手の強硬右派政党などが反対票を投じて同氏を激怒させた。

強硬右派を率いるジョブロ法相(50)はこれまでも性的少数者の権利に反対するなど強硬路線でカチンスキ氏を悩ませてきた。「法と正義」の幹部からは連立を解消して少数与党になることや解散総選挙も辞さないとの声が飛び出し始めた。

ポーランドの与党では「法と正義」が圧倒的多数を占めるが、仮に強硬右派が政権を離脱すると下院の過半数を割り込んでしまう。3年程度の残り任期を少数与党で乗り切るのは至難の業で、解散総選挙が現実味を帯びてくる。7月の大統領選挙で与党側が勝利し、当面政局は無風とみられてきたが、雲行きがにわかに怪しくなってきた。

問題を根深くしているのは、長くポーランド右派の中心にいたカチンスキ氏の後継問題と結びついているためだ。カチンスキ氏は穏健派のモラウィエツキ首相(52)を後継に据えたい考えとされるが、ジョブロ氏がそれを阻もうとしている。

ジョブロ氏はかつて「法と正義」に所属していたが、11年にカチンスキ氏と対立して追放された因縁がある。その後独自の右派政党を立ち上げ、「法と正義」と連立を組むようになった。

ジョブロ氏は不正などに妥協せずに立ち向かう姿勢で国民に一定の人気がある。いずれ「法と正義」に戻ってカチンスキ氏の有力な後継候補になるとの見方が根強い。

カチンスキ氏がジョブロ氏を切り捨てて解散総選挙に持ち込めば、右派は分裂した形での選挙となり、中道の野党が漁夫の利を得かねない。妥協してジョブロ氏を勢いづかせれば、与党内の主導権を奪われかねない。

政治学者のバルバラ・ブロジンスカ・ミロフスカ氏は「カチンスキ氏にとって長く経験していない試練」だと指摘する。ジョブロ氏の強硬右派にとっても選挙になれば多くの議席を失いかねず、落としどころをどう見つけるかが焦点になる。

ポーランドの右派政権は強権的な姿勢で欧州連合(EU)と対立を繰り返してきたが、環境政策などで必要な歩み寄りも見せてきた。より強硬なジョブロ氏が存在感を高めて同国がさらに右傾化するのが、EUにとって最悪のシナリオだ。

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