「自然発車」に注意 ブレーキかけ忘れ、死亡事故も

2020/9/23 10:52 (2020/9/23 18:42更新)
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坂道で車を降りる際にパーキングブレーキをかけ忘れるなどして勝手に車が動き出す「自然発車」による死亡事故が目立つ。運転に慣れたベテランドライバーに多くみられるうっかりミスで、専門家は「慣れた動作だからこそ注意が必要」と呼びかけている。

横浜市青葉区の住宅街で6月、ごみ収集中のパッカー車が坂道に止まった。運転していた男性作業員(51)が降りたところ、無人の車が後ろ向きに坂道を下がり始めた。男性は車を止めようとしたとみられるが、転倒して車の下敷きになり死亡。車は駐車場の壁にぶつかるまで約80メートル走行した。

神奈川県警は降車時のパーキングブレーキの引きが甘かったことが原因とみている。神戸市北区でも2019年12月、50代のバス運転手の男性が同ブレーキを引き忘れたまま車内点検で運転席を離れたため、バスが動き出した。神戸市交通局によると、はずみで近くにいた小学生の男児3人がけがをしたという。

こうした車が勝手に動き出す現象は「自然発車」と呼ばれる。公益財団法人の交通事故総合分析センターによると、自然発車による人身事故は10~19年に2245件起きた。そのうち死亡事故は15~19年の5年に119件あり、10~14年の5年間(56件)と比べて2倍超に増えた。

自然発車の事故は高齢者やベテランドライバーが起こしやすい。09~18年の自然発車の人身事故で過失が最も重い「第1当事者」となったのは60代が23%で最も多く、70代も13%を占めた。車の事故全体での第1当事者は20代(20%)が最多で、高齢になるほど低くなっている。自然発車の事故のうち8割超は、免許取得後10年以上の運転者が起こしていた。

同センターの担当者は「運転に慣熟すると、緊張感が薄まる面もあるのかもしれない」と話す。

オートマチック(AT)車のシフトにも、故障時のけん引などのためにニュートラル(N)がある。シフトをNにしたまま車を離れると傾斜で動く恐れがあり、停車時はシフトをパーキング(P)に切り替え、パーキングブレーキを確実にかける必要がある。道路交通法は車を降りる際に「完全にブレーキをかけるなど必要な措置を講ずること」と定める。

勾配がなさそうに見える駐車場でも注意が必要だ。名神高速道の桂川パーキングエリア(京都府)では自然発車による事故が19年に9件、今年も4件起きた。京都府警によると、駐車場は水はけのため緩やかに傾斜しており、パーキングブレーキが不十分だったり、かけ忘れたりするケースが目立つという。

府警の担当者は「傾斜がある駐車場は多く、平らに見えてもパーキングブレーキを確実に使ってほしい」と話す。

降車時のブレーキの徹底は各警察が呼びかけるほか、業界団体も周知に努めている。全日本トラック協会は自然発車による事故防止のため、加盟する各運送業者に向けてパーキングブレーキやギアロック、輪留めをするよう求めている。

大阪大の中井宏准教授(交通心理学)によると、車の運転のように日常的に繰り返す動作は無意識にできる半面、別の動作が急に入った場合などにミスしやすい。「慣れた動作だからこそミスが起こり、意識的にブレーキを確認するほかない。メーカー側もアラームを鳴らすなどの対策が考えられる」と指摘した。

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