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EU、ガス田巡りトルコ制裁検討 首脳会議は延期

(更新)

【パリ=白石透冴、イスタンブール=木寺もも子】欧州連合(EU)は東地中海の係争海域でガス田探査を続けるトルコへの制裁について検討する。強硬なフランスから、慎重なドイツまで加盟国間で温度差を抱え、一枚岩になれない。ベラルーシ問題への対応を含めた足並みの乱れにもつながっている。

24~25日のブリュッセルでの首脳会議で協議する予定だったが、欧州連合(EU)の報道官は22日、首脳会議を10月1~2日に延期すると発表した。ミシェルEU大統領の警備担当者の一人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたため、ベルギーの規定に従って自主隔離する。報道官によると、ミシェル氏は定期的に検査を受けており、21日時点でも陰性だったという。

首脳会議ではトルコの個人を対象とした経済制裁のほか、欧州の技術の利用禁止などを検討している。9月17日には欧州議会が「トルコは全ての違法行為をやめなければいけない」と非難する決議を採択した。

EUが問題視するのは、トルコが2019年にキプロス島周辺の海域で着手し、20年8月にギリシャ領沖でも始めた東地中海のガス田探査だ。

EU加盟国のギリシャやキプロスは自国の海域での違法な採掘だと反発しているが、トルコは自国の大陸棚や北キプロスの権益を主張する。キプロス島は事実上南北に分断されトルコのみが北キプロスを国家承認する。

批判の急先鋒(せんぽう)はフランスだ。マクロン大統領は「トルコを(地中海で)パートナーと呼ぶことはもはやできない」と公言する。8月には東地中海でギリシャとの合同軍事演習を実施し、戦闘機「ラファール」などの兵器をギリシャに売却する計画も進める。

フランスは自国のエネルギー大手トタルが東地中海の別の海域で権益を持ち、トルコへの警戒感が強い。マクロン氏が安全保障分野でEUの先導役を自負していることや、リビア内戦を巡りトルコと対立関係にあることも態度硬化につながる。

直接の当事国、キプロスも強硬派だ。キプロスはトルコを制裁しない限り、EUが大統領選挙の正当性を巡ってベラルーシに科すことを検討する制裁措置に賛成しないと主張している。全加盟国の賛成が必要なルールを逆手にとり、ベラルーシに対しEUが毅然とした対応をとることを困難にしている。

一方、経済大国ドイツは慎重だ。数百万人のトルコ系住民を国内に抱え、多数の独企業がトルコに進出するなど結びつきが深い。トルコ政府が国内で暮らす移民や難民らの渡欧を促すことで、彼らが大挙してドイツを目指す事態も警戒する。

メルケル独首相は22日、トルコのエルドアン大統領とビデオ会談し、緊張緩和を探る。地中海を密航する移民の到着地であるスペインやイタリアもトルコとの緊張が高まり、移民問題に焦点があたることを望まない。国内の極右勢力に支持が集まりかねないためだ。

在トルコの米系シンクタンクの専門家、オズギュル・ウンルヒサルジュクル氏は「全加盟国の合意が必要な(トルコへの)制裁は、骨抜きになる可能性が高い」とみる。

トルコは強気の姿勢を貫いている。エルドアン氏は21日「正当な案があれば対話で解決できるが、そうでなければ戦いをためらわない」と語った。8月にはフランス、ギリシャなどと同時期に東地中海で軍事演習を行った。

東地中海のガス田開発で先行するギリシャ、キプロスとイスラエルは、ガスを欧州に送るパイプライン建設で今年1月に合意した。ガス田探査などを通じて存在感を誇示し、ギリシャなどの権益に加わることがトルコの本音との見方もある。

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