勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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サッカー「夢フィールド」に集う喜び 代表の魂も継承

2020/9/24 3:00
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夢フィールドでのU-19日本代表候補合宿で練習を見守る内田氏(中央)=共同

夢フィールドでのU-19日本代表候補合宿で練習を見守る内田氏(中央)=共同

Jリーグの鹿島を引退したばかりの内田篤人氏(32)が日本サッカー協会(JFA)から「ロールモデルコーチ」に任命された。9月13日に発表されたこの一件、代表選手の経験を後に続く世代に還元するための方策であると同時に、JFAが日本サッカーの新たなヘッドクオーターとして今年完成させた「高円宮記念JFA夢フィールド」と相乗効果があると期待している。

■内田氏に「模範」として役割期待

本来、選手を指導するにはJFAが定めるコーチ資格を取得する必要があるが、引退したばかりの内田氏はライセンスを持っていない。一方で、現役に限りなく近い同氏は選手目線で貴重な助言を送ったり、時には実演したりすることができる。鹿島やドイツのシャルケ、そして日本代表としてワールドカップ(W杯)でも活躍した同氏との接点をつくれば、前途有望なタレントが大きな刺激を受けることは容易に想像がつく。

JFAが今回新しく設けたポストに「ロールモデル」の言葉を冠したのは、まさに同氏に「模範」としての役割を期待してのことだろう。

サッカー日本代表の新拠点「高円宮記念JFA夢フィールド」=日本サッカー協会提供・共同

サッカー日本代表の新拠点「高円宮記念JFA夢フィールド」=日本サッカー協会提供・共同

身近にお手本があることの効果の大きさを、あらためて感じる機会が実はほんの少し前にあった。それにはJFAが今春、千葉市美浜区に完成させた施設が関わっていた。日本サッカーの発展に多大な尽力をされた高円宮憲仁親王の功績をたたえ、「高円宮記念JFA夢フィールド」と名付けられたトレーニング施設のことである。

千葉の幕張にできたこの施設、今後は「代表強化、選手育成、指導者養成、普及」というJFAが掲げる活動の拠点になる。天然芝と人工芝のピッチ各2面とフットサルアリーナを備え、クラブハウスにはロッカールームやバスルーム、医療施設(PCR検査も可能)、トレーニングジム、カンファレンスルームも収めている。

夢フィールドの施設にはジムもある=日本サッカー協会提供・共同

夢フィールドの施設にはジムもある=日本サッカー協会提供・共同

反町康治・技術委員長をはじめ、各カテゴリーの日本代表の監督、コーチ、スタッフはここに詰め、いつでもトレーニングやミーティングを行えるようになった。かつてのように、練習場所を求めて代表チームが各所を転々とするようなことはしなくてすむようになったわけである。

8月にここでU-16(16歳以下)日本代表候補が5日間のキャンプを張った。そのとき、素晴らしい出来事があった。現在、イタリア・セリエAのボローニャで活躍する冨安健洋、今季からフランスのマルセイユでプレーする長友佑都が現地を訪れ、16歳以下の少年たちを前にスピーチをしてくれたのだ。

■盛り上がる筋肉さわり「すげー」連発

冨安も長友もオフの期間を利用して日本に戻り、英気を養っていた。新シーズンに向けて少し体を動かしたいということもあり、それぞれ別の日に視察も兼ねて夢フィールドを訪ねてきたのだった。そこで未来のフル代表の候補生たちとの対話が実現したわけである(こうやって代表の海外組が"里帰り"した際に、何の気兼ねもなく練習ができる"家"ができたのが本当にいいことだと思う。ボールを使った「自主練」のサポート態勢がここならいつでも整っているし、羽田と成田という空港の中間地点の幕張という立地もいい)。

私もその対話の場に居合わせ、2人のスピーチに少年たちが大いに感動を受ける様を見ていた。長友の言葉の熱量と深みは修羅場をくぐってきた人間にしか表現できないものだった。言葉と同じくらい少年たちが刺激を受けたのは、彼らが放つボリューム感というか、存在感そのものだったかもしれない。

ボローニャの冨安(左)が放つボリューム感はU-16日本代表候補たちを大いに刺激した=共同

ボローニャの冨安(左)が放つボリューム感はU-16日本代表候補たちを大いに刺激した=共同

とにかく、冨安も長友も身体のつくりが桁外れというか、筋肉量がまるで違うのだった(その場にいた少年たちと比べてではなく、大人の日本の選手と比べても)。U-16代表の森山佳郎監督が「せっかくの機会だから、みんな、触らせてもらえ」といい、冨安、長友もそれに快く応じてくれた。

2人の体に触った少年たちは服の上からでも分かる背筋、胸筋、腰回り、お尻の筋肉の盛り上がりに、ただただ「すげー」の連発。自分たちが目指さなければならないものが、まさに「手に取るように」して分かったのだった。

夢フィールドでは、こういう"世代"を超えた交流がこれから折に触れて可能になるのだろう。海外でばりばり活躍する選手は、十代の選手にとって憧れの存在であり、目標でもある。そんな選手に一声かけられるだけでも千鈞(せんきん)の重みがある。

アンダーエージの日本代表(候補)の練習を、クラブハウスからフル代表の森保一監督が見ている、なんてことも普通に起こりうる。うまく森保監督の目に留まったら、五輪代表やフル代表に抜てきされることも夢物語ではない。まさに夢フィールドだ。

■いろんな「サッカー」が刺激し合う

ロールモデルコーチに就いた内田氏も9月中旬に、ここで行われたU-19日本代表候補のキャンプで早速指導にあたった。こうした交わりやコンタクトの成果が今後どのように表れるのか、本当に楽しみである。

夢フィールドは、"世代"だけではなく、種目の壁も低くすると思っている。屋内施設のフットサルアリーナが備えられたことで、フットサル日本代表の練習を11人制の代表のコーチたちが観察するようなことも起きている。幕張の海岸沿いだけにビーチサッカーの練習施設も今後整備されるだろう。いろんな「サッカー」が勉強し合い、刺激し合う。そういうものを糧にして「世界」に打って出ていく。

コロナ禍という厄介な時代にあっては、夢フィールドもまた、フル稼働というわけにはいかない。しかし、そんな状況だからこそ、臨機応変にいろいろな手が打てる自前の拠点をサッカー界として持てたことは、余計に値打ちが増したように感じるのである。

(サッカー解説者)

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