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GE、石炭火力発電から撤退へ ESGに対応

(更新)

【ニューヨーク=中山修志】米ゼネラル・エレクトリック(GE)は21日、石炭火力発電事業から撤退する方針を発表した。ESG(環境・社会・企業統治)重視の流れが強まっていることに対応し、環境負荷が大きい石炭火力から手を引く。新型コロナウイルスの影響による市況の悪化を受け、事業の選別を進める。

GEは新規の石炭発電所の建設や発電設備の供給を取りやめ、太陽光や風力など再生可能エネルギー事業に力を入れる。既存の発電所のメンテナンスやガス火力、原子力発電事業は継続する。

GEの屋台骨だった電力事業は火力発電所の建設ペース鈍化に伴って業績が悪化。2018年には15年に仏アルストムから買収した電力事業で2兆円近い減損損失を計上し、同部門で1万人の人員削減に追い込まれた。

なかでも石炭発電はシェール革命による天然ガス価格の低下や再生エネの台頭で採算が悪化。08年に全米の5割を占めた石炭発電のシェアは20年1~6月に2割弱まで低下した。

GEは電力事業を縮小しつつ、成長が続く航空機エンジン事業を柱に再生をめざす計画だった。だが、新型コロナ危機に伴う航空機需要の消失で目算が狂った。米ボーイングや欧州エアバスの大幅減産で20年4~6月期に21億ドル(約2200億円)の最終赤字に陥った。

バイオ医薬事業の売却などで資金をつないでいるが、市況の低迷が長引けば追加の資金調達が必要になる。投資家や金融機関はESG重視の姿勢を強めており、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースは石炭産業への融資を撤廃して再生エネに資金を振り向ける方針を打ち出した。資産運用最大手のブラックロックも投資先にESGを重視するよう求めている。

データセンターなどで大量の電力を消費するIT(情報技術)大手は、消費電力を再生エネに切り替え始めている。欧州や中国でも温暖化や大気汚染対策の観点から脱石炭の動きが広がっている。

トランプ米大統領は地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定からの離脱や発電所の排ガス規制の緩和などで自身の支持基盤である石炭産業を支援してきた。だが、ESGの流れに加え、天然ガスや再生エネとの価格差が広がり、全米で石炭発電所の閉鎖が相次ぐ。

GEは収益性が悪化した石炭発電から撤退し、投資家にESG重視の姿勢を示す方が得策だと判断した。石油・ガス関連の事業も縮小しており、7月には石油サービス会社ベーカー・ヒューズの保有株を3年以内に売却する方針を表明した。

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