中国、燃料電池車の開発に奨励金 EVと並ぶ次世代車に

【北京=多部田俊輔】中国政府は21日、燃料電池車(FCV)の販売補助金制度を撤廃し、中核技術の開発企業に奨励金を与える制度を導入すると発表した。中国は電気自動車(EV)の開発で海外勢との激しい競争にさらされている。FCVは普及が遅れるが、EVと並ぶ戦略的な次世代車と位置づけ、開発競争で主導権確保を狙う。
自動車行政などを統括する工業情報化省や財政省などが同日までに、通知を地方政府に出した。今後、モデル地域を選び、その地域内での企業の技術開発に奨励金を支給する仕組みだ。
トヨタ自動車は65%出資するFCVの中国合弁を設立している。トヨタの技術をベースとしたFCVのシステムを中国企業と共同開発し、自動車大手に提供する。今回の措置に外資を規制する説明がなく、新エネルギー車は対外開放分野のため、トヨタのFCV事業に追い風になる見通しだ。
中国政府は2009年にEVの販売補助金制度を導入し、メーカーは補助金を利用してEVを開発し、年約100万台の世界最大市場に押し上げた。一方、FCVは技術的な難度が高く、累計販売台数は7千台にとどまる。このため、EVでは実施していない技術開発への直接支援を決めた。
通知によると、政策変更はFCVのサプライチェーン(供給網)の構築が狙い。水素と酸素の化学反応で動力源となる電気を起こす「スタック」と呼ばれる中核部品や電極など、各種素材の開発を促す。バスなどの商用車向けを重点的に支援するとしている。
新制度の適用期間は4年間。地方政府は申請にあたって、FCVの技術を開発している企業の実績や研究計画、サプライチェーンの状況を盛り込むことが求められる。500台の走行計画や2万キロメートルの走行距離目標などが選定の基準となる見込み。
モデル地域の応募は11月中旬まで。「京津冀」と呼ばれる北京、天津、河北省の一体経済圏、上海を中心とする長江デルタ、広東省を中心とする珠江デルタの都市に加え、成都市・重慶市がモデル地域の候補に挙がっている。

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