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MLBに新風吹き込む コーエン氏のメッツ買収
スポーツライター 杉浦大介

2020/9/21 3:00
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ニューヨークのベースボールに新時代が到来するのかもしれない。それほど大きな意味を持つ発表が、14日(日本時間15日)、メッツよりなされた。

コーエン氏は米スポーツ史上最高額の24億ドルで米大リーグ、メッツを買収する=ロイター

コーエン氏は米スポーツ史上最高額の24億ドルで米大リーグ、メッツを買収する=ロイター

この日、資産家のスティーブ・コーエン氏がメッツを買収すると発表。買収額は米プロスポーツ史上最高額の24億ドル(約2500億円)だという。コーエン氏が正式にオーナーとなるためには、11月のオーナー会議で他の29球団のオーナーのうち23票以上の承認が必要となる。この最後のハードルをクリアできた場合、新オーナーがメッツの95%を、現オーナーであるフレッド・ウィルポン氏の一族が経営するスターリング・エクイティーズが残り5%を保有することになる。

「メッツの買収で(オーナー一族の)ウィルポン家、カッツ家と合意したことに興奮しています」

コーエン氏はそんな短い声明文で喜びを表現したが、エキサイトしているのは新オーナーだけではないようだ。近年、チームの方向性に不満を持っていたメッツファンもSNS(交流サイト)上などで口々に興奮を表現している。

2000年代は積極的な補強を続けたメッツだが、現オーナーのウィルポン氏がバーナード・マドフ元ナスダック会長の巨額詐欺事件の被害に遭ったこともあり、2012~18年はリーグの給料総額トップ10から陥落。14年の給料総額は全30チーム中22番目にまで落ち込んだ。近年はやや持ち直したものの、それでも全力で勝ちにいっている印象はなく、ニューヨークという大都市に本拠地を置くビッグマーケット・チームという雰囲気はなくなってしまった。

■資産家オーナー、強化に大金投入

しかし今後、そんなメッツの方向性が劇的に変わっても不思議はない。ヘッジファンドで財を築いた新オーナーのコーエン氏は、米経済誌フォーブスによる推定資産は約146億ドルというとてつもない大富豪だ。推定資産48億ドルでメジャーリーグ1位だったテッド・ラーナー氏(ナショナルズ)、同45億ドルで2位のチャールズ・ジョンソン氏(ジャイアンツ)、同38億で3位のマリアン・イリッチ氏(タイガース)らを大きく上回り、ダントツの資産を誇る人物がメッツのオーナーに就任する。そんな背景を考えれば、来季以降のメッツはチーム強化に大金を注ぎ込むと考えるのが自然に違いない。

今オフ、FAの目玉とされるリアルミュート(フィリーズ)=ロイター

今オフ、FAの目玉とされるリアルミュート(フィリーズ)=ロイター

「彼は競争心の強い人で、これまでも投資を惜しんでこなかった。ずっと大切に思ってきたこのチームのオーナーとしても、そのやり方を保つのであれば、私たちの組織は革新的な方向に向かっていけるだろう」

18日、リモート会見に応じたメッツのブロディ・バンワゲネン・ゼネラルマネジャー(GM)はそう述べ、これからはチームのあり方が変わることを予想していた。

バンワゲネンGMの言葉通り、ニューヨーク出身のコーエン氏はもともと幼少期から大のメッツファンでもあったという。だとすれば、昨季まで3年連続プレーオフを逃したチームを立て直したいという気持ちはより強いに違いない。この新オーナーの下で、今オフ、メッツがフリーエージェント(FA)の目玉になると目されるJT・リアルミュート捕手(フィリーズ)、あるいはトレバー・バウアー投手(レッズ)といった大物に次々と触手を伸ばしても、もう誰も驚くべきではないのだろう。

もちろん大型補強が必ずしも優勝に結びつくわけではなく、アルバート・プホルス、ジョシュ・ハミルトン、アンソニー・レンドンのようなビッグネームを買いあさっても一向に浮上できないエンゼルスのようなチームもある。ただ、資産に恵まれたチームの方が浮上のチャンスが多いのは当然。現在のメッツには2年連続サイ・ヤング賞のジェイコブ・デグロム投手、昨季新人記録の53本塁打を打ったピート・アロンソ一塁手といった好選手がそろっているだけに、上手に補強できれば来季には一気に優勝が狙える位置に躍進しても不思議はない。

■FA活性化期待する選手、代理人

喜んでいるのはメッツファンだけでない。ESPN.comのバスター・オルニー記者は、「コーエン氏のオーナー就任は選手の代理人たちからも素晴らしいニュースだと受け取られている」と記していた。

メッツには2年連続サイ・ヤング賞のデグロムら好選手がそろう=AP

メッツには2年連続サイ・ヤング賞のデグロムら好選手がそろう=AP

MLBの年間収益は昨季まで17年連続増加しているにもかかわらず、選手の平均年俸は過去2年連続でダウン。多くのチームが緊縮財政を敷き、スター選手への長期高額投資を避け始めたことがその理由とされてきた。そんな最中に世界77位(フォーブス調べ)という超リッチマンが球団オーナーになったのだから、スター選手、代理人からFA戦線活性化への期待が託されるのは当然か。コーエン氏はチーム作りへの巨額投資を約束したわけではないが、ニューヨークという大都会のチームがそれにふさわしい資産を得たことの話題性はやはり大きい。

これまではニューヨークでもヤンキースに比べて影が薄い存在であり続けてきたメッツが、来季はリーグ最大級の注目チームになるのだろう。新オーナーが予想通り承認されれば、今オフはその動きから目が離せない。"世界の首都"と呼ばれる街の新オーナーがMLBに新風を吹き込んでくれれば、球界全体に様々な形で好影響が及ぶことは間違いあるまい。

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