米大統領選、最高裁人事争点に リベラル派判事死去

米大統領選
2020/9/19 17:30 (2020/9/20 9:23更新)
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米連邦最高裁のギンズバーグ判事は女性の権利向上に尽力した=ロイター

米連邦最高裁のギンズバーグ判事は女性の権利向上に尽力した=ロイター

【ワシントン=中村亮】米連邦最高裁判所でリベラル派の代表格だったルース・ギンズバーグ判事が18日、87歳で亡くなった。トランプ米大統領は19日、後任判事の指名を巡って「遅滞なく行う義務がある」とツイッターに投稿した。妊娠中絶や銃規制など米国社会を二分する問題の司法判断に影響力を持つ最高裁判事の後任人事は国民の関心も高い。11月の米大統領選挙に向けて重要な争点に浮上してきた。

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最高裁は中絶や銃の個人保有の是非といった保守派とリベラル派で意見が真っ向から対立するテーマを扱うため国民の関心が高い。米ピュー・リサーチ・センターが今夏に行った世論調査によると、大統領選で投票先を決めるうえで最高裁判事指名が「とても重要」との回答は64%にのぼった。経済や医療に続いて3番目に多い。

トランプ氏は大統領再選に向けて後任人事で反転攻勢を狙う。9月上旬、最高裁に空席が生じた場合の候補リストを更新し、保守派が名を連ねた。後任に保守派を指名し、支持基盤の保守派有権者の求心力向上につなげたい考えだ。判事は議会上院で過半数の賛成が得られると承認される。現在は上院(定数100)のうち53議席を与党・共和党が握るため、手続きを優位に進められる。

トランプ政権と共和党は大統領選前に議会での判事人事の承認を目指すか判断を迫られる。最高裁では保守派判事が5人、リベラル派が4人とみられてきた。リベラル派のギンズバーグ氏の後任に保守派を任命できれば最高裁の保守化が数十年にわたって続く可能性が高く、トランプ氏の大きな功績となる。

議会承認を選挙後に持ち越す可能性も残る。政権交代が起きれば民主党の大統領候補であるバイデン前副大統領がリベラル派を指名すると主張し、保守派有権者の危機感をあおって求心力を高められる。大統領選直前に最高裁判事の承認手続きを進めるのは極めて異例で、共和党の穏健派が反対する可能性もある。

上院共和党トップのマコネル院内総務は18日の声明で「トランプ氏が指名した判事候補を上院本会議で採決する」と明言したが、採決の時期には触れなかった。ホワイトハウスと今後の段取りを協議するとみられる。

バイデン氏は18日、東部デラウェア州で記者団に「次期大統領が後任を選ぶべきだ」との考えを示した。政権・共和党による早期の人事承認をけん制した発言だ。米メディアによると、ギンズバーグ氏本人も生前にバイデン氏と同じ考えを周辺に示していた。

世論調査で優位に立つバイデン氏陣営は後任人事でリベラル派の結束を目指す。バイデン氏はこれまで最高裁に空席が出れば黒人女性を指名する考えを示していた。選挙では人種の多様性を訴えている。最高裁人事でもその考えを反映すれば、マイノリティーの権利向上を重視するリベラル派の支持が得やすい。

亡くなったギンズバーグ氏はリベラル派として女性の権利向上に尽力した。米メディアによると、進学したハーバード大法科大学院では約500人の生徒のうち女性はわずか9人。大学幹部から「なぜ男性がいるべき場所にあなたがいるのか」と言われたという。当時の法曹界は男性優位の慣習だったため法律事務所から就職を拒否された。

弁護士の夢をあきらめられず、全米市民自由連合(ACLU)幹部として女性の権利向上を求める訴訟で手腕を発揮。1993年に当時のクリントン大統領が史上2人目の最高裁の女性判事に指名した。LGBT(性的少数者)の権利を認め、人工妊娠中絶を支持する判断を次々と下し、リベラル派の人気を集めた。

トランプ氏は18日、中西部ミネソタ州での支持者集会後に記者団に対して「彼女が亡くなったのか。知らなかった」と驚きを隠さなかった。民主党のペロシ下院議長は同日の声明で「民主主義にとって計り知れない損失だ」と嘆いた。ジョン・ロバーツ最高裁長官も「歴史的で偉大な裁判官だった」と功績をたたえた。

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