5つの保険で資産形成? 33歳女性がはまった落とし穴
Dr.マネーお悩み外来 Vol.11

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2020/9/29 2:00
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本日もお金の悩みを抱えた人が「白鳥FP事務所」のzoom相談にやってきました。「自分のお金は自分で管理運用できるように、一生困らないマネーリテラシーを身につける」をモットーに、FP(ファイナンシャルプランナー)の白鳥京香がみなさまのご相談にお答えします。

Case5: 本日のご相談は、33歳の会社員Eさん(女性)です。実家暮らしで、これまで好きなようにお金を使ってきましたが、老後のための資産形成をしていこうと決意しました。

Eさん 将来に向けて資産形成しようと思い立ったのは10カ月ほど前のことです。でも、どうすれば良いのかわからず、街の保険ショップに相談に行きました。そこで『投資信託や株と違い、保険は元本割れしないので安心ですよ』と勧められて、5つの保険に加入しました。でも、コロナ禍で時間ができて、ネットなどで様々な記事を読むうちに、イデコやつみたてNISA(少額投資非課税制度)で運用した方がいいんじゃないかと思い始めたんです。このままでよいのでしょうか。

白鳥 資産形成をしたいのに5つの保険加入ですか……。少々残念なスタートになってしまいましたね。まず、資産形成を始めるには、商品を購入する前にやるべきことがいくつかあります。合理的に資産形成をしていくには、次のように進めます。

このように商品を選ぶのは最後なのです。(1)の必要貯蓄は人によって違いますので、ライフプランや将来受給できる年金額、老後の生活費率などを考えて求めます。「人生設計の基本公式」を使えば簡単に求められますよ。

そして、もう一つ知っておきたいのは、お金の相談ができても、金融商品を販売している人は「販売員」でもあるということです。もちろん、顧客本位で正しく商品を販売している人もいるでしょう。でも、そうではない人もいます。金融機関から得る給料や手数料などが収入源である、つまり利益相反があるということを理解しましょう。

本来は顧客の意向やライフプラン等を踏まえた上で、適切な金融商品、サービスの提案を行うことが基本です。「老後のための資産形成をしたい」というEさんに保険商品を5つも薦めるのはどうかと思います。本当に顧客本位であるなら、自らが取り扱う金融商品やサービスだけでなく、まずはイデコやつみたてNISAなどの紹介があってもしかるべきです。保険ショップでは難しいことでしょうけれど。ともかく、契約内容を確認しましょう。

同居のご両親は共に会社員ですし、Eさんにもしものことがあったときに経済的に困る人はいません。家族収入保険は不要ではないでしょうか。

また、Eさんは会社員ですので働けなくなっても傷病手当金が受け取れます。就業不能保険も必要性は低いですね。ちなみに、傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対し、給与の支払いがない、あっても傷病手当金の額より少ない場合に支給されます。支給される期間は、支給開始した日から最長1年6カ月です。1日あたりの金額は標準報酬日額の3分の2です。

次に、米ドル建て終身保険、米ドル建て養老保険ですが、どういう商品なのか理解できていますか? 保険だから元本割れしなくて安心とか、高金利だからおトクなどと薦められるケースが多いのですが、元本保証は外貨ベースでのことです。

外貨建て保険は、保険料を外貨に変えて、外国の債券や一部投資信託などで運用します。積立金等は一般的にはいつかは日本円に戻して受け取ります。その時、加入時よりも円安なら良いのですが、円高ならば元本割れしてしまうことだってあるのです。

また、超低金利の円に比べて魅力的に見える積立利率も、為替次第では運用益が吹き飛びます。今後為替がどうなるかはわかりませんので、必ず増えるとはいえないでしょう。そもそも、外貨建て保険というのは死亡保障と資産形成をパッケージにした商品ですので、保障と運用の両方にコストがかかり、お金をためるには効率の悪い商品です。今、新型コロナウイルス禍で、海外の長期金利が低下している中、積立利率も下がっていますので、今後は、お金を増やすのはより難しくなるでしょう。

また、受取時の保険金額については、時間による貨幣価値の低下を考える必要もあります。今の100万円と30年後の100万円の価値は同じではありません。外貨建て保険は、保険という名前ですが、商品性が複雑で、為替リスク以外にも市場リスクなどあり、ハイリスクな運用商品だということを認識しましょう。

変額保険も同じく高コスト商品です。運用目的での保険への加入はお勧めできません。

老後のためなど、お金の計画を立てるときは、冒頭でお伝えしたように、自分の必要貯蓄額を考えます。Eさんの現在の必要貯蓄率を「人生設計の基本公式」で計算してみましょう。

必要貯蓄率は約26%ですので、現在の手取り年収375万円にかけると、毎月の必要貯蓄額は約8万1000円です。老後生活費率を90%とあえて高く設定していますので、今後、ライフスタイルが変われば、計算をし直してください。大切なのは必要貯蓄額を守ることです。

さて、現在Eさんは保険料を毎月4万円ほど払っています。さらに貯蓄するのがきつければ、考え直さなければなりません。効率的にお金を増やすには、税制優遇の大きいイデコ、つみたてNISAなどを優先的に使いましょう。

今まで支払った10カ月分の保険料が無駄になってしまいますが、今後30年近く保険料を払い続けることを考えると、必要貯蓄額のうちイデコで2万3000円、つみたてNISAで3万3000円を運用し、残りの2万5000円は預金で積み立てていく方がよいでしょう。

もちろんいくらリスクを取れるのか考えてからですが。今日の処方箋です。

◇  ◇  ◇

・お金の置き場所は重要です。なるべく低コストのところで合理的に資産形成していきましょう。

・商品性を正しく理解せずに、勧められるままに契約するのはやめましょう。

ではまた2週間後に。

岩城みずほ(いわき・みずほ)

ファイナンシャルプランナー(CFP)。オフィスベネフィット代表。「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、中立的な立場でコンサルティングする」をモットーに、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長も務める。著書に『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)など。https://www.officebenefit.com/
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