繰り返される「預託商法」被害、原則禁止の法改正へ

社会・くらし
2020/9/18 17:44 (2020/9/18 22:58更新)
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悪質な販売預託商法による被害が後を絶たない。警視庁などは18日、磁気ネックレスなどの預託商法を展開したジャパンライフ(東京、破産手続き中)の旧経営陣ら14人を詐欺容疑で逮捕した。同社は高齢者ら延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたとみられる。

過去の事件を含め預託商法を巡る被害額が累計1兆円を超える中、消費者庁は来年の通常国会に特定商品預託法改正案を提出し、販売預託商法を原則禁止にする方針だ。

逮捕されたのは同社元会長の山口隆祥容疑者(78)や次女で元社長の山口ひろみ容疑者(48)ら。逮捕容疑は2017年8~11月、元本の返済や配当支払いをできる見込みがないのに虚偽の説明で顧客12人から約8千万円を詐取した疑い。

関係者によると、同社は17年12月に2回不渡りを出し経営破綻したが、同月時点でも顧客に「経営状態は大丈夫」などと偽って勧誘し、集金を続けていたという。

これまでも悪質な預託商法が多く摘発されてきたのに、被害はなぜ繰り返されるのか。

預託商法は商品などを販売すると同時に顧客から預かり、運用したり第三者に貸し出したりして利益を還元する仕組み。販売代金の支払いという形で事実上の投資を募るもので、高配当や元本保証をうたう。

当初は配当金が支払われるため被害に気づきにくい。顧客側も「もうけたい」「自分はだまされない」という心理が強い場合、業者の説明を信じてしまう。しかし、実際は預けた商品が存在しなかったり、売り上げを別の顧客の配当に回す「自転車操業」だったりすることが多い。

捜査関係者は「運用状況が悪くても顧客に開示せず、決算を粉飾している業者が目立つ。顧客も配当が続くうちは業者を信用するため被害が膨れ上がる」と指摘する。

1980年代の豊田商事事件で2千億円超の被害が出たことを受け、預託商法を一部規制する預託法が86年に施行された。しかし、当初は「貴金属」など一部にしか適用されず様々な商品で被害が続発。そのたびに規制対象が見直され「英会話教室会員権」や「家畜」などが加えられた。

「法整備が被害を後追いしている」との批判もあり、消費者庁は21年の通常国会に預託商法の原則禁止を盛り込んだ預託法の改正案を出す方針を決めている。同庁担当者は預託商法について「新規契約者から集めた資金を別の顧客への配当に回さざるを得ず、いつか必ず破綻する仕組みだ」と悪質性を強調する。

しかし、原則禁止の方針が決まった後も業者の不審な動きは止まっていない。国民生活センターには7月、「USBメモリを60万円で購入してレンタルすれば利益が出る」などと勧誘されたという相談があった。

日本女子大の細川幸一教授(消費者法)は「預託商法が反社会的な手法とみなされ、禁止の方針となったのは被害の根絶に向けた大きな一歩だ。脱法的な新たな手口が現れれば、そのたびに法改正などで規制する柔軟な姿勢も欠かせない」と指摘する。

豊田商事事件が起きた1980年代、日本の総人口に占める65歳以上の割合は10%前後だったが、2019年は28.4%で今後も増加する。認知症などで判断能力が低下した場合、詐欺的被害に遭う恐れがあり、高齢者の財産を守るため家族や周囲のサポートも重要になっている。

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