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腰痛で病院に 治療せず、なぜ「様子を見ましょう」?

中野ジェームズ修一のカラダお悩み解消講座 第6回

腰が痛くて整形外科を受診したのに「様子を見ましょう」と言われたことはないだろうか?(c)Olga Yastremska-123RF
日経Gooday(グッデイ)

カラダについてのお悩み、ありませんか? 体調がいまいちよくない、運動で病気を予防したい、スポーツのパフォーマンスを上げたい…。そんなお悩みを、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが解決します! 今回は、腰が痛いのを治してほしくて整形外科に行ったのに、「様子を見ましょう」と言われて湿布を渡されたという方のお悩みです。

今月のお悩み
腰が痛くて病院に来たのに、治療はしないの?

 40代、会社員。腰痛持ちの男性です。

 腰に痛みを感じるようになったのは30代からでしょうか。ときどき強い痛みを発症するので、湿布を貼ったりマッサージに行ったりしていました。

 この春に昇進し、部を取りまとめるポジションに着いたところ、コロナ禍の影響を受けて仕事がさらに忙しくなり、連日のように残業続きです。

 外回りからデスクワークとなったため、ほぼ1日中、座りっぱなしで仕事をしています。そのせいか、腰に強い痛みを感じるようになりました。

 最初はだるい、重い、という感覚でしたが、そのうちギシギシときしむような感じになり、「このままではぎっくり腰になるのでは」と戦々恐々としていました。

 緊急事態宣言が解除されるのを待って病院の整形外科へ行ってみたところ、MRI(核磁気共鳴画像法)の画像を見ながら、医師に「ヘルニアがあります」と言われました。

 そうか、ヘルニアが原因だったのか、と思ったのですが、医師は「いったん様子を見て、痛みがひどくなるようなら、また治療の方法を考えましょう」と言って、湿布を出してくれただけで終わりでした。

 正直、拍子抜けしてしまいました。これでいいのでしょうか?

 同じく腰痛持ちの同僚に聞いてみたところ、病院に行っても「様子を見ましょう」と湿布を渡されるだけのことは多いそうです。

 ただ、MRIでヘルニアが見つかったのだから、ヘルニアの治療はしなくていいのか、とふに落ちません。他の病院でセカンドオピニオンを受けたほうがいいでしょうか?

 とりあえず湿布を貼り、インターネットで調べて見つけた"腰痛体操"を自主的に続けています。

「ヘルニア」があるからといって治療が必要とは限らない

腰痛で病院に駆け込んでも、特段治療はせず「様子を見ましょう」と言われることが実際に多いですよね。何か治療を期待していたのに、湿布を渡されるだけで拍子抜けした、と感じる人は多いようです。

相談者の方は「ヘルニアがありますね」とMRIの結果を見て言われたのですから、なぜ治療しないのかと疑問に思ったかもしれませんが、医師がそのように診断したのには、きちんとした理由があるはずです。

椎間板ヘルニアでは、椎骨と椎骨の間にある軟骨(椎間板)の組織が飛び出し、神経を圧迫する。(c) Iryna Timonina-123RF

椎間板ヘルニアとは、背骨の骨(椎骨)と骨との間でクッションの役割を果たしている軟骨(椎間板)が変性し、組織の一部が飛び出すことをいいます。このとき、飛び出した椎間板の一部が、付近にある神経を圧迫すると、腰や足に激しい痛みやしびれなどの症状が起きることもあります。

実は、椎間板ヘルニアの9割は自然に治るといわれています。飛び出した椎間板が、白血球の一種であるマクロファージに食べられたりして、時間が経つと消えてしまうからです。湿布を貼って様子を見ているうちに痛みが消えることも、実際に多いのです。

「様子を見ましょう」と言われるのは、そのためだと思います。椎間板ヘルニアが原因でしびれやまひ、排尿障害などがある場合は、手術が必要になることもあるそうです。

ストレスがあると痛みを感じる仕組み

厚生労働省の推計によると、腰痛を抱えている日本人は2800万人。ところが、医師の診察やMRIなどの画像検査で腰痛の原因が特定できるのは、わずか15%だといわれています。残りの85%は、原因を厳密には特定できない「非特異的腰痛」なのです。

原因が特定できるケースでは、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、重篤な脊柱の病変などが挙げられます。

原因が特定できない85%のケースでも、ひょっとして、より精密な検査を行えば原因が分かることもあるかもしれません。ただ、多くの場合、原因が厳密に分からなくても、時間が経てば自然と痛みが消えていくので、やはり「様子を見ましょう」と言われるのです。

なぜ原因不明の場合でも時間が経つと痛みが消えるのかというと、腰痛には「ストレス」が関係していることが多いからです。

腰痛にストレスが関係することは、さまざまな論文によって明らかになっています。福島県立医科大学の研究では、ストレスが高まることによって脳の血流量が減り、前脳にある「側坐核」という部位の働きが低下すると、腰に痛みを感じやすくなるということが分かりました。

側坐核には鎮痛物質「オピオイド」を分泌させる機能があり、このオピオイドが正常に分泌されれば、炎症などによる体の小さな痛みは抑えられます。ところが、過剰なストレスによって側坐核の働きが低下し、オピオイドの分泌が減少すると、体が痛みを感じやすくなってしまうのです。

その結果、腰痛として現れるというわけです。

実は、画像検査で椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が見つかった人でも、痛みを感じていないことがあります。つまり、オピオイドの分泌により、痛みが抑えられているのです。

できる範囲で、気分転換になる運動を!

さて、相談者の方は、昇進して仕事の環境が変わったとのことなので、ストレスが腰の痛みに関係しているかもしれません。

私のクライアントにも、「人生の転機」をきっかけに腰が痛くなり、運動を始めようとする方が多いです。「いつから腰が痛くなりましたか?」と聞くと、「転職をしてから」「結婚してから」などの答えが返ってきます。

痛みにストレスが関係しているのであれば、気分転換になるような運動を行うことが効果的です。これは日本整形外科学会も強く推奨しています。ぜひ、受診したときにどのような運動なら行ってもよいか医師に確認してみてください。

逆に、「腰が痛いから」といって横になり、何もしないでじっとしていると、痛みに意識が集中し、かえって「痛みからくるストレス」が高まり、悪循環に陥ってしまう場合もあります。

相談者の方は、さっそく体操を取り入れていますね。これは正解です。体を動かすことで痛みが和らぐようでしたら、ストレッチを取り入れてみてもいいでしょう。

ストレッチを行うことは、気分転換やなまった体を動かすことによるストレス軽減になるだけでなく、柔軟性を向上させ、痛みが感じにくくなる、という効果も期待できます(前回記事「体は本当に柔らかくなる? プロ指南のストレッチ効果」参照)。

また、ウオーキングや登山、ハイキングなど、気分転換になるものであれば、同様に効果的です。休日に趣味に没頭するのもよいでしょう。

せっかく病院に行ったのに「様子を見ましょう」と言われて拍子抜けしたかもしれませんが、逆にいえば手術などの治療をすぐしなければいけない状況ではないということ。むしろ安心して、医師に相談をしながら安全な範囲で積極的に体を動かしてみましょう。

【中野さんからのアドバイス】
腰が痛いのに「様子を見ましょう」と言われた場合は…

▼湿布を貼って様子を見ているうちに痛みが消える可能性が高い
▼画像診断でヘルニアが見つかってもすぐ治療が必要とは限らない
▼気分転換になる運動でストレスを解消しよう
▼もし痛みが強くなったら再び受診する

(まとめ:長島恭子=フリーライター)

[日経Gooday2020年9月17日付記事を再構成]
中野ジェームズ修一さん
スポーツモチベーションCLUB100技術責任者/PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。フィジカルを強化することで競技力向上やけが予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。元卓球選手の福原愛さんなど、多くのアスリートから絶大な支持を得る。早くからモチベーションの大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

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