米国の現金給付、個人消費を5%上押し
〈とれたてリポート〉「カード取扱高を活用した米国の消費動向分析」(日銀)

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2020/9/20 2:00
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経済分析をする上で、従来よりも更新頻度が高く鮮度の良い「高頻度データ」の重要性が高まっている。日銀が9月9日に公表したリポート「日銀レビュー 新型コロナウイルス感染症拡大の米国個人消費への影響」では、米国のクレジット・デビットカードの取扱高を手掛かりに米国の消費動向を分析した。

取扱額の推移からは、トランプ大統領が緊急事態宣言を発した後に急激に落ち込んだ後、現金給付を開始した後に回復に向かっている様子がうかがえる。

日銀はこれに加え、州別や業態別のデータを組み合わせて分析した。その結果(1)「外出禁止令」は個人消費を20%程度下押しした。(2)新規感染者数の増加は、厳格な公衆衛生上の措置を伴わなくとも、個人消費を相応に下押しする。なかでも、6月後半以降に新規感染者数が増加に転じたことが個人消費の持ち直しペースを鈍化させた(3)家計への現金給付は、給付後にしばらくの間個人消費を最大5%程度上押ししている――ことが示唆されたという。

また、業態別にみてみると、宿泊・飲食サービスや娯楽、交通など「対面サービスが必要となる業態では、新規感染者数の増加が売り上げを押し下げる効果が大きい」一方で「食品スーパーや総合スーパー、ヘルスケア(病院等)では影響が限定的」と推計した。定性的にはこれまでも指摘されてきたが、日銀の分析で、定量的にも一定の根拠があると示された格好だ。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長も7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「カード情報をベースにした消費支出は、6月下旬以降軟化している」と指摘しており、「伝統的なマクロ統計に加え、非伝統的な高頻度データを活用することの有用性は高い」(日銀国際局)という。

これまでの伝統的な統計データは全体を正確に把握するために調査期間が1カ月単位のものが多く、調査時点から公表までのタイムラグがあるのが短所だ。IT(情報技術)技術の浸透で様々な情報がデジタルデータで蓄積しやすくなっている。経済活動や政策の判断にどう役立てるかがいっそう問われそうだ。(三田敬大)

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「とれたてリポート」は投資に役立つ注目の調査リポートを紹介するコラムです。随時掲載します。

[日経ヴェリタス2020年9月20日付]

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