持続化給付金、簡略申請突かれる 800人以上分の不正計画?

社会・くらし
2020/9/18 2:00
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新型コロナウイルス対策で国が個人事業主らに支給する「持続化給付金」の不正受給が横行している。愛知県警が摘発した事件は口コミで集めた学生や会社員ら400人以上が関わり、被害額は4億円に上るとみられる。800人以上の虚偽申請を計画していた疑いもあり、速やかな救済のために簡素化した手続きの弱みが狙われた形だ。

中小企業庁はホームページで不正受給を警告する

中小企業庁はホームページで不正受給を警告する

「国から100万円もらえるよ」「税理士がいるから大丈夫」。愛知県警が8月に詐欺の疑いで逮捕した男3人は、こうしたうたい文句を餌に知り合いの紹介や口コミで不正受給の申請者を勧誘し、SNS(交流サイト)に開設したアカウントを通じて具体的な手口を伝えていた。

県警によると、中部地方の学生や主婦ら20~30代の男女を中心に、約400人が「個人事業主」を装って申請したとみられる。架空の確定申告書類や売り上げ台帳を作って給付金を不正受給し、3分の1を男らに渡していた。被害額は4億円に上る可能性がある。

3人は16日に同容疑で再逮捕され、県警は関係先からさらに400人分以上の個人情報が記載された資料を押収。同容疑者らが計800人以上分を不正受給しようとした疑いもあり、裏付け捜査を進めている。

不正受給は全国で横行している。7月以降、山梨や兵庫などの警察が不正に関与した大学生らを逮捕。国民生活センターによると給付金に関する詐欺の情報は8月末までに1200件以上寄せられ、SNSには「誰でも簡単にもらえます」と不正の代行を持ちかける投稿が散見されるという。

持続化給付金は、新型コロナで収入が50%以上減少した中小企業に対して最大200万円、個人事業主らに最大100万円を支給する制度だ。

一般的な国の補助金は審査が厳しく、詳しい事業内容や数年分の確定申告書類など様々な書類が必要だ。一方、同給付金は速やかな救済を図るため手続きが簡素で、1年分の確定申告書類と対象月の売り上げ台帳、通帳の写しなどをインターネットで申請すれば2週間ほどで給付金が振り込まれる。8月末までに300万件超が支給された。

スピード重視の制度が不正を招いた面もある。制度を所管する中小企業庁の担当者は「事業の実態の証明を求めたり、明らかに不正な点がないのに本人に問い合わせたりすることはない」と、「性善説」に立っていることを説明。「倒産や廃業を生まないため必要な制度設計だった」と語る。

同庁は対策として注意喚起のメッセージをホームページに載せたほか、不正に勧誘する「ツイッター」の投稿に警告メッセージを発する取り組みを始めた。「コロナ禍で苦しむ人を救済する制度。目的を逸脱した不正受給は許せない」と強調し、不正受給が明らかになればペナルティー料を上乗せして返還を求める。応じなければ民事訴訟や詐欺罪での刑事告訴に踏み切る可能性もある。

事件の摘発を受け、同庁には「(逮捕の)報道を見て怖くなった。警察に事情を話してお金を返したい」などの相談が相次ぐ。愛知県警には不正受給に関する相談が9月15日時点で178件届いているという。

政府は2020年度予算の新型コロナ対策の予備費1兆1257億円のうち、8割以上を持続化給付金の支給に充てた。申請の受け付けは21年1月まで続く。公的給付に詳しい明治大の岡部卓専任教授は「新型コロナの補償として給付金を設けたこと自体はよいが、モラルハザードが起きていることは否定できない」と指摘。「専門職員を多く配置するなど、適切な審査実施のコストをかけなければ必ず悪用される。行政が適切な広報活動や情報提供を進めることが必要だ」と話す。

(林咲希)

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