佐渡裕、120人の大編成オケ復活に挑む 感染対策を徹底
文化の風

関西タイムライン
2020/9/18 2:01
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兵庫県立芸術文化センターの佐渡裕芸術監督

兵庫県立芸術文化センターの佐渡裕芸術監督

佐渡裕が19、20日、芸術監督を務める兵庫県立芸術文化センター(西宮市)でリヒャルト・シュトラウスの大曲「アルプス交響曲」を振る。演奏は兵庫芸術文化センター管弦楽団。奏者120人が舞台やバルコニーで曲を奏でる。コロナ禍の今、敬遠されがちな大編成にあえて挑むのはなぜか。佐渡や関係者らに聞いた。

■舞台設備フル活用

「アルプス交響曲ほどの規模の大編成の演奏は、コロナ後では世界初ではないか」と佐渡は言葉に力を込める。多くの楽団や音楽ホールが奏者同士の距離を保つため、小編成で演奏する傾向が続く。「世界中でベートーベンや、せいぜいブラームスあたりまでを演奏している」(佐渡)状態だ。

後期ロマン派の巨匠、シュトラウスは巨大オーケストラの迫力で聴衆を圧倒することを得意とした。アルプス交響曲の演奏は舞台上に110人、バルコニーなどに配置される別動隊が10人の計120人が必要とされ、風音器や雷音器など珍しい大型打楽器も動員する。

発案者は佐渡自身。緊急事態宣言の解除前から企画を練ってきた。「芸文センターの機能を生かせば大編成のオケは十分できる。中止や延期、払い戻しばかりの今だからこそホールの良さ、設備を存分に使って面白いことをやるべきだ」と判断した。

コの字状の反響板を通常よりも約6メートル後方にずらすと、隙間から普段は見えない舞台裏がのぞく

コの字状の反響板を通常よりも約6メートル後方にずらすと、隙間から普段は見えない舞台裏がのぞく

もちろん感染対策には万全を期す。芸文センターの大ホールは舞台をコの字形に囲む可動式の反響板を備える。今回、この反響板を6メートルほど後退させることで舞台の面積を広げ、十分な社会的距離をとりながら多数の奏者を舞台に上げることを可能にした。

可動式の反響板は本来、オペラ上演での舞台転換などを想定したもの。特に床面に対して水平方向に動かせる反響板を持つホールは、びわ湖ホール(大津市)など国内に数えるほどしかない。通常とは異なる使い方のため、数日前から会場で練習やサウンドチェックをする必要がある。コロナでホールでの公演が減っていたのも幸いした。

「自前のオケと自前のスペースがないとできない公演だ。ぼくがいて、スタッフがいて、オケが劇場にあって、舞台設備があったから即決できた」と佐渡。「劇場はわくわくすることをやっていかないと。どうせやるなら大きいやつを」。佐渡の思惑を実現する条件がうまくそろった。

■飛沫の距離計測

他の感染対策も徹底する。楽器からの飛沫を遮るため、舞台と客席の間にエアカーテンを設置。飛沫を舞台上方にそらす。2000人規模のホールだが客数は約800人に限定。感染症の専門家に指示を仰ぎ、ホール内の空気の動きを調べるスモーク実験も行った。反響板をずらすと音響が損なわれ後方の管楽器の音が聞こえづらくなるとの懸念もある。演奏の際、小型マイクを使って管楽器の音量を調整するか検討中だ。

オケや演奏家の関連団体でつくるクラシック音楽公演運営推進協議会が演奏時の飛沫の飛散距離を計測した結果、奏者間に必要な距離は想定よりかなり短くなった。舞台上の奏者の数はじわじわ増えている。アルプス交響曲は大規模オーケストラの復活を印象づけることだろう。佐渡は当日に向け、「本当に壮大な曲で、これほど大きな曲を大きな空間でやってしまうのはとても気持ちが良いこと。アルプスの情景が目に浮かぶような演奏を楽しんでもらえるはず」と自信のほどを語る。

(山本紗世)

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