アベノミクスと北海道、金融の収益モデル崩壊の8年

2020/9/17 16:30
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訪日客の増加もあり北海道の金融機関は貸し出しを伸ばしてきた(17年、札幌市)

訪日客の増加もあり北海道の金融機関は貸し出しを伸ばしてきた(17年、札幌市)

7年8カ月にわたった安倍晋三前首相の経済政策「アベノミクス」は、北海道の金融機関にもビジネスモデルの大転換を迫った。最大の衝撃だったのは日銀が2016年に導入したマイナス金利政策。集めた預金を運用して稼ぐ従来の方程式は崩壊し、稼ぐ力は細り続けている。

16年1月に日銀が導入したマイナス金利政策に、北洋銀行の石井純二頭取(当時)は「マーケット構造に左右されない収益構造を構築する必要がある」と述べていた。北海道銀行の笹原晶博頭取も「マイナス金利政策で金利の下がり幅が大きくなる」と想定。4年がたち、当時の警戒感は現実のものとなってきた。

北洋銀の20年3月期の貸出金利回りは安倍政権発足直後の13年3月期比で0.58ポイント減の0.87%で1%を下回り、北海道銀も同0.52ポイント減の1.12%に落ち込んでいる。

とはいえ企業の資金需要自体は増えている。北洋銀と北海道銀の20年3月期末の貸出残高は計10兆4800億円で、13年3月期末と比べて20%増えている。株価の上昇や相次ぐ公共事業、訪日外国人客(インバウンド)の急増に伴うホテル建設といった設備投資が増えたのが大きい。

東京商工リサーチ北海道支社によると、道内の倒産件数も安倍政権が発足した12年の457件をピークに減少傾向をたどり、19年は12年比54%減の212件にとどまる。リーマン・ショックや東日本大震災からの国内経済の回復局面も重なり、融資の焦げ付きに備えて積み立てる与信費用が縮小。銀行の損益にはプラスに働いた。

貸出金が増えて与信費用が抑えられても、金利低下の落ち込みはその上をいく。本業のもうけを示すコア業務純益は北洋銀が20年3月期で13年3月期比52%減の161億円、北海道銀は12%減の167億円。収益力の低下は止まらない。

97年の拓銀破綻とその後の再編を経て北洋銀と道銀の2行体制が定着している地銀に比べ、市場の縮小や低金利の影響を受けやすい地域金融機関の生き残りへの危機感は深刻だ。17年1月に旧江差信金(江差町)と旧函館信金(函館市)が合併し、道南うみ街信金(江差町)が誕生。18年1月には旧札幌信金(札幌市)と旧小樽信金(小樽市)、旧北海信金(余市町)が合併し北海道信金(札幌市)が誕生している。

菅義偉首相は地方の銀行について「将来的には数が多すぎるのではないか」などと過去に述べており、金融機関にさらなる再編を促すとみる向きは多い。道内の信金幹部は「信金の数は多い感はあるが、規模が大きければ良いという訳でもないのだが…」とこぼす。

安倍路線の継承を掲げる菅政権でも大規模な金融緩和は続く見通しだが、新型コロナウイルスとの共存時代の生き残り策を明確に打ち出している金融機関は少ない。収益力の低下がこのままズルズル続けば、再編の機運が高まる可能性もある。

(塩崎健太郎)

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