EU外交の意思決定を迅速化、欧州委員長が改革案公表へ

2020/9/16 22:40 (2020/9/17 0:01更新)
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【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は16日の演説で、EU外交の迅速な意思決定に向け、新たな改革案を近く公表すると表明した。人権侵害などに関わった国外の人物に対し、迅速に域内の資産を凍結したり、ビザを取り消したりできるようにする。ロシアやトルコなどに強く対処できる体制を整えたい考えだ。

「なぜEUの価値観に関する簡単な声明さえ、出すのが遅れるのか」。フォンデアライエン氏は外交の意思決定が迅速にできないことにいらだちを示した。EU内で複雑な手続きがあるのが理由という。その上で制裁を迅速に実行できる改革案を提示すると述べた。

背景には域外でEUが重視する人権や民主主義をないがしろにする問題が相次いでいるにもかかわらず、EUが迅速に対応できていないことがある。同氏は改革案の詳細は明かさなかったが、全会一致の原則を改め、多数決方式への移行を検討しているとみられる。

同氏は中国のウイグルや香港の問題に「声を上げ続けなければならない」としたほか、反体制派ナワリヌイ氏への神経剤の使用でロシアを非難。特にロシアの毒物使用は「今回が初めてではない」として、域内の親ロシア勢力をけん制した。

東地中海で緊張が高まるトルコは「重要な隣国」としながらも、ガス田開発を巡ってギリシャやキプロスを脅していると批判。緊張緩和には「一方的な行動をやめ、対話を再開することだ」とトルコに自制を求めた。

新型コロナウイルス対策では感染拡大当初は各国の協力が円滑に進まず、混乱を招いたことを認めた。対策としてまず欧州医薬品庁(EMA)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)の権限を強化し、危機に対応できる体制を整える。第2段階として米国にならってEU版の生物医学先端研究開発局(BARDA)を創設する。BARDAは新型コロナの抗体薬の治験などで、米以外の企業にも資金拠出している。

感染症など国境を越えた脅威には国際協力が欠かせないとして、イタリアが21年の20カ国・地域(G20)議長国になるのを機に「国際健康サミット」を開くと発表した。コンテ伊首相はツイッターで「よりよい健康と将来のために我々は団結する」と歓迎した。

フォンデアライエン氏はコロナ禍を機に「経済改革を断行する」と述べた。景気回復には企業が資金を確保しやすいよう流動性の高い資本市場が必要と主張。「資本市場同盟」と「銀行同盟」を完成させれば、ユーロの国際的地位の向上にもつながるとみる。同氏は「ユーロへの信頼はかつてなく強い」と力説した。

デジタル化を推進する一方、個人データ保護を強化する方針を示した。欧州委は近く「Eアイデンティティー」と呼ぶ制度案をまとめる。ネット上で新しいIDなどをつくるために個人情報を入力するが、その情報がどう使われるかを自分で決められるようになるという。

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