Apple、サブスクで稼ぐ 新Watchでフィットネス

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北米
2020/9/16 22:53
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アップルが年内に始める運動管理支援サービス「フィットネス+」のイメージ

アップルが年内に始める運動管理支援サービス「フィットネス+」のイメージ

米アップルがスマートフォン「iPhone」の次の収益源の育成に力を入れている。15日には腕時計型端末「アップルウオッチ」の最新機種を披露したのにあわせ、自宅などでできる遠隔フィットネスサービスを年内に始めると発表した。動画や音楽配信のセット販売にも乗り出すなど、端末販売に依存しないビジネスモデルへの転換を急いでいる。

15日にはタブレット端末の新機種のほか、2015年に発売したウオッチの「シリーズ6」を発表した。特徴はヘルスケア機能の充実で、時計の背面の赤外線センサーなどを使って血中酸素濃度を測定できるようにした。新型コロナウイルスの流行を背景に消費者の健康意識が高まっていることに対応した。

その時計を使い、運動中の心拍数や活動量などのデータを記録するのが新サービスの「フィットネス+(プラス)」だ。トレーナーが出演する動画を見ながらヨガやダンス、筋力トレーニングなどの運動をこなすことで、自宅や屋外でもフィットネスクラブのような体験が得られる。

アップルによると、ウオッチで最も多く使われているアプリは、ランニングや水泳などの活動量を記録する「ワークアウトアプリ」という。新型コロナの感染への懸念から、ジムやフィットネスクラブに通えない消費者も増えている。潜在的なニーズは高いとみて、この分野でのサブスクリプション(継続課金)型サービスを始める。

フィットネス+の米国での価格は月額9.99ドル(年額は79.99ドル)。ウオッチの新規購入者は3カ月間無料となるが、月額4.99ドルの動画配信「アップルTV+」や、100種類以上のゲームを楽しめる「アーケード」など、他の自社サービスと比べても強気の値付けと言える。

自前のサブスクが増えてきたため、各種サービスをひとまとめにした「アップルワン」と呼ぶ新たな売り方を今秋から始めることも発表した。動画と音楽、ゲーム配信に加え、クラウド上のデータ保管サービスも含めた個人向け基本プランは月額14.95ドルと、別々に契約するより約3割安くなる。米国では基本プランの4サービスにフィットネス+とニュース配信を加えた29.95ドルのプランも用意した。

19年に動画やゲームなどのサブスク型サービスを始めたことにより、アップルの20年4~6月期のサービス部門の売上高は前年同期比15%増の131億5600万ドルとなった。売上高全体に占める割合は2割強に高まっている。主力のiPhoneの年間販売台数が15年9月期の約2億3千万台をピークに頭打ちとなっている中、サービス部門の成長期待は大きい。

アップルはセット販売によって個々の競合サービスを契約している顧客を取り込む戦略を描く。競合するサービスの提供企業にとっては脅威となる。在宅フィットネスの先駆けとされる米ペロトン・インタラクティブ株は、アップルのサービス参入発表を受け、15日の米国市場で大きく売られる場面があった。

アプリ配信と決済の基盤を握るアップルが、サービス領域で存在感を高めることへの警戒感は強い。競争法違反の疑いで欧州連合(EU)の欧州委員会にアップルを調査するよう訴えた音楽配信大手のスポティファイ(スウェーデン)は15日に声明を発表。アップルが支配的な地位を利用して競合他社に不利益を与えようとしていると主張した。

こうした状況に対しティム・クック最高経営責任者(CEO)は「とてつもない競争にさらされている」とし、独占状態との見方を否定する。ただ、お膝元の米国でも米議会や司法省を中心にアップルなど米IT(情報技術)大手への反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)に基づく調査が続いている。

15日には披露されなかったが、米メディアが10月に発表すると報じる次世代通信規格「5G」対応のiPhoneへの消費者や投資家の関心はなお高い。新たな収益源を求めてスマホなどの端末からサービス、コンテンツへと垂直統合を進めようとするアップル。収益の多様化を目指す戦略は、一方で自らへの規制を強めるリスクもはらんでいる。

(シリコンバレー=白石武志、佐藤浩実)

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