米株高はバブル 終わりは突然やってくる(澤上篤人)
「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信会長

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2020/9/23 2:00
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写真はイメージ=PIXTA

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投資業界のカリスマの一人、澤上篤人氏が考える長期投資のあるべき姿を、同社最高投資責任者の草刈貴弘氏との対談形式で紹介する。

■市場に押し寄せるカネ余りの津波

澤上篤人(以下、澤上) 新型コロナウィルスの感染拡大で世界経済はひどく落ち込んでいるのに、それを無視するような株高が続いている。この状況がどうなっていくのか、皆さんも興味津々だろう。

世界経済の現状、つまり実体経済の落ち込みぶりを見るに、今の株価の跳ね上がりぶりは異様である。とりわけ米国。ナスダック総合株価指数が連日のように過去最高値を更新しているさまは、まさに「どうなっているの?」だよ。

草刈貴弘(以下、草刈) 本当にこのままではどうにかなってしまいますよ。ナスダックだけでなくS&P500種株価指数も同様です。現在の上げで特徴的なのが一部の企業の株価だけがとんでもなく上昇しているという点です。

例えば情報技術セクターですが、S&P500の時価総額に占める割合が25%を超えてきています。ここには米アマゾン・ドット・コムや米アルファベット(米グーグルの親会社)は含まれていないにもかかわらずです。

さらにFANGM(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグル、マイクロソフト)の5社だけでS&P500の時価総額の2割超と、一握りの企業の株価上昇が指数全体を押し上げている。実際、ナスダック総合指数構成銘柄の年初来のトータルリターンの中央値はマイナスですし、マイナスの企業の数の方が多いんです。

澤上 世界的なカネ余りのマグマが株式市場に押し寄せてきているとしか表現しようがない。それも、津波のごとくだ。この津波は意外と持続性がある。世界各国がタガの外れたような金融緩和に走り、米連邦準備理事会(FRB)はじめ中央銀行が無制限に近い資金供給をしている。世界中の投資家は安心しきって株価の高値追いに群がっているわけだ。それどころか、さらに買い上がっていっている。

バブル状況で投機が度を越すと、投資先に対する価値判断もバランス感覚もほったらかし。皆で高値追いの市場に飛び込んでいる。

草刈 コロナ前から日本も欧州もマイナス金利。しかも金融緩和を続けて資産購入までしてきました。ここにきてFRBまでこちら側に回った影響が大きかった。まさか社債、しかも格付けが下がった社債まで買うとは思いませんでした。

極め付けは失業給付です。失業手当に特例で週600ドルを上乗せして給付してきましたが、働いていた時より、失業手当を受け取っている時の方が収入がアップしたという人が続出しているとか。

確かに消費を維持する政策として効果はあったのでしょう。ただ、ばらまかれたお金の一部は株式市場にも流れ込んでいるとみています。ロビンフッドなる手数料無料の証券会社の登場も相まって、アフリカで猛威をふるうサバクトビバッタのように、「イナゴ投資家」が株式市場になだれ込んでいます。もはや株式市場は賭場のような状態になっています。

澤上篤人氏(写真:竹井俊晴)

澤上篤人氏(写真:竹井俊晴)

澤上 イナゴ投資家か、面白い表現だね。米国の個人マネーが、そんなにも「株式賭場」になだれ込んでいるのか。

草刈 年金に対する不安からか、日本でもネット証券の新規口座開設数が増えているそうですが、それとは事情が違う米国の状況は深刻だと思います。

ロビンフッド誕生のきっかけは、リーマン・ショック後、米国で起きた米経済界に対する抗議デモ「ウォール街を占拠せよ」です。金融の民主化・大衆化を目指して学生が証券会社を立ち上げました。

コロナで職を失い、都市封鎖で外出を禁じられる一方、大盤振る舞いの給付金を手にした一部の人たちが、一獲千金を夢見てロビンフッドが開帳する「賭場」に押し寄せているのではないでしょうか。

ロビンフッドでは投資を簡単に始められるようになっていますが、オプションなどデリバティブ(金融派生商品)も扱っており、リスクを理解しないままのめり込むと大変なことになりかねません。これはサブプライムローンを組み込んだCDO(債務担保証券)を、リスクを理解しないまま買い入れてリーマン・ショックに巻き込まれた機関投資家と同じ構図ですよね。

手数料無料にもちゃんと理由があって、顧客の発注内容をHFT(高頻度取引)業者やマーケットメーカーに渡してリベートを受け取っているとか。

個人投資家の裾野、特に若者の間に株取引が広がったと思いますが、投資というよりは投機をする人を増やしてしまっただけなのではないかと思いますね。

市場と実体経済の乖離が限界を超えた時、奈落の底に落とされないよう祈るほかありません。

澤上 日米ともこの10年ほど、大量の資金供給による株高で景気を押し上げようとしてきた。景気にはさしたる浮揚効果は表れてないが、マーケットは着実にバブル化してきている。そのバブルに群がる投機熱が機関投資家のみならず米国の個人にも及んできたということか。ウーンとうなりたくなるね。

草刈 以前、この連載の中で、米国が「今だけカネだけ自分だけ」という価値観に覆われていると嘆いたことがあります。この価値観が世界中に広がってはいないか、というのが今の私の懸念です。

投資とは早くリタイアするための、ゲームで言えばワープのようなもので、多くの人が血眼になって手掛かりを探している。少しでもその可能性があればバーゲンセールのように多くの人が殺到する。

このような価値観が投資家層だけでなく、多くの人にも伝染しているのではないか。金融緩和や財政出動は、投資家層だけでなく、社会全体のモラルハザードを引き起こしてはいないか……と考えると少し怖い気がします。

■バブル崩壊は突然やって来る

澤上 そのバブル買いだが、ある朝突然に崩れだすことになろう。きっかけは、何でもいい。あるいは、さしたる悪材料も出ていないのに突如として崩れだすかもしれない。

ともあれ、バブル相場が崩れだしたら、もう奈落の底へ一直線だ。そこでようやく、ここまでのバブル株高は砂上の楼閣だったことを世の中は思い知ることになろう。

本格派の長期投資家は、ずっと前からこのカネ余りバブルとは一線を画した運用に撤している。実体経済からかけ離れた株高などに乗っかる気など、さらさらない。

それよりも、カネ余りバブルが続けば続くほど、その崩れを読み込んだ投資戦略固めを急ぐ。わずかばかりの利ザヤを追い求めてバブルに踊るよりも、その崩れによる損失リスクの方がはるかに大きい。また、バブル崩壊後に向けて、今のうちから対処する方が投資リターンはよほど大きくなるよ。

草刈貴弘氏(左、写真:竹井俊晴)

草刈貴弘氏(左、写真:竹井俊晴)

澤上篤人(さわかみ・あつと)
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。
草刈貴弘(くさかり・たかひろ)
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)。

[日経マネー2020年11月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年 11 月号 年末高の波に乗れ! 年後半の稼ぎ方&勝負株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/9/19)
価格 : 750円(税込み)

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