EU、温暖化ガス55%削減 2030年目標引き上げ

ヨーロッパ
2020/9/16 21:00 (2020/9/17 5:06更新)
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欧州議会で演説するフォンデアライエン欧州委員長(16日、ブリュッセル)=ロイター

欧州議会で演説するフォンデアライエン欧州委員長(16日、ブリュッセル)=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は16日の一般教書演説で、2030年に域内の温暖化ガスの排出量を1990年比で少なくとも55%減らすと表明した。従来の40%減から引き上げ、他国と比べて突出した水準になる。EUを離脱した英国との関係では、英EU間で発効した離脱協定の順守を求めた。

フォンデアライエン氏は「30年目標は野心的で、達成可能だ。そして欧州のためになる」とブリュッセルの欧州議会で強調した。欧州委員長は毎年9月、過去の成果や今後取り組む課題を話す一般教書演説にのぞむ。2019年12月に就任したフォンデアライエン氏の同演説は今回が初めて。

EUは50年に域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を持つ。30年目標はその中間点という位置づけだ。18年の排出量は1990年比で20%減。世界で異常気象などが頻発している危機感から目標を一段と上積みする。

他国の2030年の目標をみると日本は13年度比26%減。米国は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱を表明した。中国は国内総生産(GDP)当たりの排出を05年比で60~65%減らす計画だ。各国が大胆な排出減に慎重な中、EUは高い目標を掲げ、環境技術の覇権を握る思惑がある。

具体的には自動車の二酸化炭素(CO2)排出規制を30年に向けて強化するほか、排出量取引制度を強化・拡充する。再生可能エネルギーの拡大と、ビルの省エネも排出減に貢献余地が大きいとみる。EU首脳が7月に合意した復興基金で市場から調達する7500億ユーロ(約93兆円)のうち、その3割をグリーンボンド(環境債)発行でまかなうと明らかにした。

欧州委は加盟国や関連業界などとの調整を経て21年6月までに正式な法案を提示する。ただポーランドやチェコなど石炭に多く依存する東欧諸国は高い目標設定に消極的だ。産業界にも鉄鋼や自動車など排出の多い業界には慎重論が根強い。企業は新規設備投資などを通じて対応を迫られるため、域外製品との価格競争力で不利になるのを懸念する。結論が出るまでには曲折がありそうだ。

英国との関係ではフォンデアライエン氏はジョンソン政権が準備している国内法案が、英EU間の離脱協定に違反していると主張。国内法案は、離脱協定で扱いが定まっている英領北アイルランドを巡る関税ルールを英側が独自に決められる内容だ。フォンデアライエン氏は離脱協定は既に発効しており、「一方的な変更はできない」と違反部分の撤回を求めた。

難航している英EU間の自由貿易協定(FTA)交渉では「日に日に合意のチャンスが減っている」との見方を示した。合意には「法(の順守)とお互いの信頼の問題だ」と述べ、英側の態度を批判した。

対外関係では、中国は「交渉相手であり、経済のライバルだ」と述べ、従来通りの友好一辺倒ではなく、関係を軌道修正する考えを示した。米国とは「ホワイトハウスの決定に常に同意するわけではないが、大西洋の同盟を大事にしたい」と関係改善に意欲をにじませた。

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