優待達人に聞く 年後半の利回り投資戦略と注目銘柄
持ちっぱなしで稼ぐことができると個人投資家に人気の優待・高配当株だが、コロナ禍による企業業績の悪化で投資環境は厳しさを増している。コロナ後も利回り投資で成果を出している個人投資家は、どんな視点で銘柄を選んでいるのか。2人のスゴ腕投資家に、銘柄選びのポイントと10~12月権利取りの優待銘柄の狙い目を聞いた。
「総合利回り4%」を基準に銘柄を精査(v-com2さん)
優待株投資のブロガーとして高い知名度を誇るv-com2さん(ハンドルネーム)は、優待利回りと配当利回りを足し合わせた「総合利回り」に注目。総合利回り4%を投資の基準にしている。その上で、銘柄ごとの特性に応じて利回りの許容範囲を変更、投資判断を下す。
例えば成長株なら配当や優待より業績の伸長が求められるため、「その場合は4%以下でも投資することはある」。一方、成長性が乏しく無配で優待のみの銘柄なら、「いつ優待が変更・廃止されるか分からない。このため、4%よりも高い利回りを求めることになる」と話す。一定の基準を持ちながらも、総合利回りの数字だけで判断せず、手間をかけて銘柄をチェックすることが必要だという。
優待利回りについて考慮しているのが「実質利回り」だ。「ヤフオク!」や「メルカリ」で、優待券がどれくらいの金額で売買されているかを確認。その額を優待品の実質価格と考え、それが優待券の額面の7~8割など高いものを選ぶようにしている。こうすれば、仮に自分で消費できなくても売却で優待額に近い利益を得ることができるから、という理由だ。
配当利回りについては、利益のうちどのくらいを配当に回しているかを示す「配当性向」を確認。企業が目標とする性配当向より実際の数値が高くなっていないかチェックする。
「一時的な業績悪化で配当性向が高くなるのは仕方がない。だがコロナ前から配当性向が高い銘柄は投資を見送っている。理想は目標の数値に向かって、徐々に増配しているような銘柄」という。
併せて自己資本がコロナ後に大きく減っていないかにも着目。成長株は別として、安全性を求めるなら自己資本比率50%以上など、財務が強固な銘柄を選びたいと話す。

コロナ後は優待利回りより配当利回りを重視(なちゅさん)
長年にわたり優待株投資を実践する個人投資家のなちゅさん(ハンドルネーム)は、先行き不透明な現在の状況では、配当利回りを重視した銘柄選びを行っているという。
配当金額は株主総会での議決が必要。だが優待に関しては企業の取締役会で廃止や変更を決めることができる。このため、「景気に不透明感が漂う環境下では、企業の一存で明日、廃止されてしまうかもしれない優待よりも、配当利回りに着目して銘柄を選びたい」と話す。
コロナ以前から、優待利回り4%、配当利回り2%など、優待利回りが配当利回りの倍程度になっている銘柄には「注意が必要」という意識を持っていたなちゅさん。現在は、より警戒を深めている。特に自社製品・サービスの割引といった低コストの優待なら優待変更・廃止の可能性は低いが、QUOカードなどの金券類優待で優待利回りの比率が高い場合、「優待廃止・改悪となれば総合利回りがグッと下がってしまう」。極端に利回りが高い金券優待は要注意だという。
配当利回りを重視するのには、もう1つ理由がある。通期での配当予想を開示していない企業もある中で、予想配当利回りが出ている、つまり今期の配当予想を明確に示している企業は、それだけ業績に自信があるはず、との「読み」からだ。「配当予想は投資家に対する約束。それを明示している企業は、それなりに業績の見通しが立っているということ。その『自信』が安心感につながる」との理由だ。
もちろん一部の企業は今期の業績悪化は一時的だと考え、早々に配当維持を打ち出している可能性もある。だが予想以上に業績悪化が続けば、来期以降は減配の可能性も。そのためコロナによる業績への影響度が低い銘柄を選ぶのが大前提だ。

(佐藤由紀子)
[日経マネー2020年11月号の記事を再構成]