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金正恩氏、水害復旧に躍起 国連制裁とコロナで「三重苦」

水害に遭った農場を視察する金正恩氏。12日に報じられた=朝鮮通信

【ソウル=恩地洋介】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が、夏に見舞われた大規模な水害からの早期復旧に躍起だ。朝鮮労働党や軍に号令をかけるなど異例の対応を続ける。長引く国連制裁と新型コロナウイルス、水害などの自然災害の「三重苦」は、統治改革や対米交渉にも影響を与える可能性がある。

15日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮の今夏の降雨量は例年の年間降雨量の88%を占め、過去25年間で2番目の量に達した。3日に朝鮮半島をかすめた台風9号では数十人が亡くなり、2千戸余りの住宅が壊れた。8月にも梅雨前線の停滞に伴う洪水や、台風による農地の被害が相次いだ。

金正恩氏の動静から浮かぶ指導部の危機感は並大抵ではない。5日には台風9号の復旧支援を呼びかける異例の書簡を平壌市の党員に向けて公開し、動員された1万2千人が被災地入りした。

12日と15日には、金正恩氏が8月に洪水被害に遭った南部の黄海北道を視察したと報じられた。黄海道は北朝鮮最大の穀倉地帯だ。金正恩氏が同地の被災現場を訪れるのは8月から4回目で、食糧不足を危惧する姿勢がうかがえる。

金正恩氏は復旧作業を激励し「全ての国家的潜在力を、人民の幸せを守る活動に総動員する」と強調した。金正恩氏は自らの備蓄分の食糧を被災地に供与し、ロシアからは5月以降に計5万トンの小麦支援を受けた。

指導部は10月10日の党創建75周年までの復旧へ党や軍に発破を掛ける。国威発揚の記念日と位置づけ行事を準備しており、被害を放置したままでは威信に関わるからだ。

一方で、10月の完成を目指していた平壌総合病院や東部・元山のリゾート施設などの建設には支障が出かねない。人員や建築資材が被災地に優先配分されるからだ。金正恩氏は8日の党会議で「台風被害により国家的に推進する闘争課題を全面的に保留し、方向を変えざるを得ない」と事業計画の修正を表明した。

韓国政府は北朝鮮の足元の状況を「三重苦」と表現している。米朝協議の行き詰まりで制裁解除は見通せず、新型コロナの流入を防ぐため中朝の境界は封鎖が続く。統一省によると1~6月期の対中貿易総額は前年同期比で67%減少した。

指導部はこうした情勢を踏まえ、8月下旬の党中央委員会総会で20年までの経済5カ年計画の未達を認めた。災害からの復興に全力を挙げて、市民生活の安定に取り組む姿勢を示さなければ、統治も不安定化しかねない。

こうした中、韓国情報機関は金正恩氏に統治ストレスが蓄積していると見ている。最高指導者や軍に集中しすぎた権限を、妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長らに委譲するなど、責任を分散する改革を進めている。

北朝鮮指導部はトランプ大統領の再選がかかる11月の米大統領選の行方を注視している。21年1月には約5年ぶりとなる党大会を開催すると決めており、それまでは米国を刺激する行動は控え、内政の立て直しに注力する可能性が高いと専門家はみている。在韓米軍のエイブラムス司令官は10日、北朝鮮による弾道ミサイル発射などの可能性について「今のところ兆候はない」と指摘した。

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