ラグビー

スポーツ熱 伝統が支えに 後藤正治さん
関西のミカタ ノンフィクション作家

関西タイムライン
2020/9/16 2:01
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ごとう・まさはる 1946年京都市生まれ。京大農卒。「空白の軌跡」など医療をテーマにした著作のほかに、「遠いリング」「リターンマッチ」「スカウト」「ベラ・チャスラフスカ 最も美しく」などスポーツに関する著書も多数。

ごとう・まさはる 1946年京都市生まれ。京大農卒。「空白の軌跡」など医療をテーマにした著作のほかに、「遠いリング」「リターンマッチ」「スカウト」「ベラ・チャスラフスカ 最も美しく」などスポーツに関する著書も多数。

■ボクシングやラグビーなどスポーツに関する著書が多い京都市出身のノンフィクション作家、後藤正治さん(73)。医科学を皮切りに文筆の道に進み、スポーツに傾倒していったきっかけにある個性派選手との出会いがあった。

直木賞作家の白石一文さんがまだ文芸春秋の編集者で私を担当していたころ、「医学ものもいいですが、少し楽しい話でもどうですか」と持ちかけられ、好きな野球を書くことになった。テーマは「代打」。1試合で1度しか打席に立たず、起用されない日もある。どういう商売なんだろうと興味を持った。

真っ先に思い浮かんだのが阪神の川藤幸三選手。取材の了承をもらい、現役最終年の1986年、夏から約3カ月間、甲子園球場や遠征先で観戦した。驚いたのは彼の記憶力。1年以上前の巨人戦、2点リードされた九回裏2死満塁から代打で三振に倒れた場面の全球について、コースや球種、その時々の心理を克明に語ってくれた。対戦相手の加藤初投手にも話を聞いたところ証言が全て一致した。

福井の高校からドラフト9位で入団し、何度かクビになりかけながらのし上がった選手。誰よりも早く球場入りし、あるかどうか分からない出番のために室内練習場で打ち込む。「浪速の春団治」の人気は、人知れぬ努力からここぞの場面で殊勲打を何度も打ったからこそだと思う。

川藤さん(右)に密着したことがスポーツ取材に傾倒するきっかけになった(1986年)

川藤さん(右)に密着したことがスポーツ取材に傾倒するきっかけになった(1986年)

■ノンフィクションの対象としての魅力がスポーツ関係者にはあるという。

選手寿命が延び、プロ野球では40代の選手も珍しくなくなったが、かつては30代半ばで引退する人が多かった。極端に早いのは水泳で、20代でやめる人も。早くに「老い」が到来し、人生を凝縮していくところがノンフィクションの対象として魅力的に映った。川藤選手を書いたのも引退間際の選手の人生を書きたい思いから。全盛期の選手より、下り坂もたどった人に人生の深みを感じる。

同志社大ラグビー部を長く指揮した岡仁詩さんにもひかれた。同志社の全盛期をつくった人だが、功労者とみられるのを嫌った。彼の言葉にはいつも「学生が」という主語が出てきた。あくまでプレーをするのは学生で、試合のメンバーを選ぶのは主将。ラグビーを通して良い学生生活を送ってほしい、というメッセージがあったと思う。「スポ根」とは対極にある、人格者でありリベラリストだった。

岡さんがラグビーの様々な理論を編み出したのは関西の「新しもん好き」の気質もあっただろう。新しい戦術を使って負けると「また小手先に走ってと批判された」と話していたが、先進の気概があった。教え子の平尾誠二さんも岡さんに近い考えで、そういう中心軸になる人がいたことが関西ラグビー界の隆盛につながったのではないか。

■新型コロナウイルス禍であらゆるスポーツの試合が止まった。

80年モスクワ五輪を日本がボイコットし、選手たちは突如目標を失った。マラソンの瀬古利彦選手は全盛時で、出場していたら金メダルを取っていただろう。コロナ禍に見舞われた選手も目標を奪われた点は同じで、これからはそれぞれが新たな価値観や目標を持って生きていかなければならないのだと思う。

観客の入場制限でスタジアムの風景は変わった。それでもスポーツが持つ意味はそんなに変わらないと思う。関西には長い歴史を持つスポーツクラブやボクシングジムがあり、地域のスポーツ熱を支えてきた。高校野球では今春の選抜大会が中止になったが、代わりに日本高野連は代表校を甲子園に招いて交流試合を開催した。見えないところで大人が支えれば、あとは若い人が自分で人生を切り開いていく。スポーツはその成長の助けになる。(聞き手は合六謙二)

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