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脇腹の激痛に耐えW杯8強 ラグビー・具智元(上)

2020/9/20 3:00
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昨年のW杯スコットランド戦でスクラムを組む具。日本初の8強に貢献した

昨年のW杯スコットランド戦でスクラムを組む具。日本初の8強に貢献した

何人もの代表選手が大会のベストプレーに挙げた。日本のラグビー史上、最高の場面の一つでもあっただろう。赤白のジャージーが一枚岩となって前進する。緑の集団に亀裂が入る。たまらず顔を上げた相手を押しのけ、右プロップの具智元はさらに前へ。主審の笛が鳴ると、拳を振り下ろしてほえた。

昨年のワールドカップ(W杯)、日本の第2戦。アイルランドに6-12とリードを許し、自陣のスクラムという逆境だった。しかし、世界有数の強力FWを逆に圧倒する。普段は派手に喜ばない具の「自然に感情が出た」という雄たけびに味方選手が駆け寄り祝福。金星を挙げた日本は初の8強に駆け上がった。

スクラムに人生を懸ける親子の夢がかなった瞬間でもあった。父の東春は韓国代表で「アジア最強のプロップ」と呼ばれた。具も12歳で競技を開始。体重80キロに達していた息子に東春は告げた。「ポジションは3番(右プロップ)。3番で認められたら価値がある」。父の分厚い背中を真っすぐに追うことになった。

ラグビー人気の低い韓国を離れ、中学2年で来日。15歳の時、10年後のW杯の日本開催が決まった。「こんなチャンスはない。日本代表でW杯に出るのが夢になった」。東春も桜のジャージーを着ようとする息子の背中を押した。「いい経験ができるように日本代表でやった方がいい」

親子で夢見たW杯。日本最強の右プロップに成長した具は、全試合に出場して戦い抜いた。第3戦のサモア戦、スクラムが崩れ、脇腹に痛みを感じた。天王山のスコットランド戦では2人掛かりのタックルを受け、肋軟骨を損傷。20分後に交代すると涙を浮かべた。仲間の信頼を裏切った自責の念に加え、「次の試合は厳しいと思った。悲しい、寂しい気持ちが大きかった」。

それでもピッチに戻る。準々決勝の南アフリカ戦、試合前とハーフタイムに痛み止めの薬を飲んで戦った。試合は完敗。スクラムも劣勢だったが、一度だけ具の右から押して反則を奪う。ここから日本の唯一の得点が生まれた。

父が韓国代表で痛み止め薬を飲んで出場した試合の話を聞いたことがある。「首と腰のヘルニアがすごくて。後ろのロックとフランカーに『スクラムを押さないで』と言った」という。8人一体で組むこのプレーでは考えられない注文。それでも「普通に組めたとお父さんは言っていた」。責任感と有言実行。この父にしてこの子ありといえようか。

王者南アフリカとの真っ向勝負のダメージは大きく、今度は肋骨を折った。完治に2~3カ月を要した。それでも大会後、父から掛けられた言葉は何よりのねぎらいになったはずだ。代表でのプレーについて細かいことを言わない人が珍しく褒めてくれた。「アイルランド戦はいいスクラムだった」=敬称略

(谷口誠)

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