安倍政権の7年8カ月、データに見る北海道の光と影

インバウンド
菅内閣発足
2020/9/14 19:15
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安倍政権が積極的に誘致した外国人観光客は北海道でも急増した(16年、新千歳空港国際線ターミナル)

安倍政権が積極的に誘致した外国人観光客は北海道でも急増した(16年、新千歳空港国際線ターミナル)

7年8カ月に及んだ安倍晋三政権は北海道経済に恩恵と副作用をもたらした。訪日客(インバウンド)の急増で観光地が潤った一方、相次ぐ貿易自由化は農業や漁業など1次産業に打撃を与えた。「アベノミクス」効果も中小企業は蚊帳の外で、新首相となる菅義偉官房長官に期待は大きい。

2012年12月に発足した安倍政権の看板政策だったアベノミクスは財政出動と金融緩和に成長戦略を組み合わせた「3本の矢」をうたい、大企業の海外輸出を後押しした。1ドル=80円台もつけた円相場は一時120円台まで戻し、輸出採算は改善した。

北海道内の総生産(GDP)も15年度には19兆円を超えた。雇用・所得環境も改善し、19年の道内の完全失業率は12年比2.6ポイント減の2.6%まで下がった。1人あたりの道民所得は17年度が12年度比12%増の268万円となっている。

北海道の成長の原動力は訪日外国人(インバウンド)客に支えられた観光だった。円安も追い風に、道内の訪日客は新型コロナの影響が出る前の18年度時点で、12年度の約4倍にあたる311万人に上った。政府は訪日客向けの食料品や化粧品など全ての品目を免税とし、アジアを中心にビザ(査証)の免除・要件緩和を進めるなど受け入れ拡大に突き進んできた。

ただ、観光を除けば中小企業に恩恵が行き渡ったとは言いがたい。北海道中小企業家同友会の守和彦代表理事は「道内の中小にアベノミクスの恩恵は限定的だった」と話す。非正規の拡大で人手不足は深刻化し、機械化やIT(情報技術)の拡充で労働時間を削減する「働き方改革」も経営者には重荷となった。

安倍政権は18年に米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP11)を発効させ、20年には日米貿易協定など貿易の自由化にカジを切った。北海道は農林水産物の生産額への影響額を最大518億円のマイナスとはじく。

農畜産物のなかでも牛乳乳製品と牛肉への影響は大きく、北海道士幌町で肉牛農家を営む曽我透代表は「輸入品との競合で価格はじわじわ下がっている」と焦りを隠さない。従来より年齢が若い段階で出荷するなど、収益の安定を急いでいる。

政策の柱の一つとして掲げた「地方創生」は道半ばで終わり、全国よりも早く進む道内の人口減に歯止めはかかっていない。20年時点の道内人口は12年から20万人減少。日本人だけでみれば20年では転出が転入を上回る「社会減」が7907人と全国2番目に多く、改善の兆しは見えない。

安倍首相が陣頭指揮した北方領土の返還交渉ではロシアが領土割譲を禁じる憲法を制定し、返還への道は険しくなった。千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長の宮谷内亮一氏は「安倍首相が領土問題に積極的に取り組んでいる点は評価している。ただ結果として何ら進展はなかった」と話す。

北海道二十一世紀総合研究所は20年度の経済成長率(実質ベース)を過去最低のマイナス5.7%と厳しくみる。同研究所の横浜啓調査部長は「人材確保のため外国人技能実習生の受け入れ復活が急務だ」と主張する。

世界でも知られる観光地となった分、新型コロナウイルス危機で負った深手から立ち直るのは容易ではない。14日の自民党総裁選に圧勝し、新政権を担う菅氏には経済復調に向けたリーダーシップを求める声が目立つ。

(塩崎健太郎)

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