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次は「マイナ健康保険証」 ケタ違いのお得ケースも

知っ得・お金のトリセツ(24)

第99代内閣総理大臣に16日、就任見通しの菅義偉自民党新総裁。目玉政策に掲げるのがデジタル行政を一括して担う「デジタル庁」の創設。核となるのがマイナンバーだ。「マイナンバー制度と国と地方のデジタル基盤を抜本的に改善する必要がある」と語る。

政府はもともと2022年度には日本の住民のほぼ全てがマイナンバーカードを保有する青写真を描く。そのスケジュールに沿って施策が予定されており、9月からはマイナンバーカード経由で手続き後にキャッシュレス決済をすると5000円が還元されるマイナポイント事業が始まっている。次の目玉が来年3月からの健康保険証としての利用だ。

21年3月以降の病院では…?

「顔を枠内に入れてください」。病院を訪れると、これまで受付に座っていた病院職員に代わり「顔認証付きカードリーダー」が対応する――。こんな"近未来"が半年後には訪れる。実際の対応は病院次第でバラツキがあるが、デジタル対応を済ませた病院では従来通りの保険証による有人受付に加えて、マイナンバーカードを読み込ませての顔認証もしくは4ケタの暗証番号の入力による機械での受け付けが可能になる。地味に面倒だった月替わりごとの保険証確認も不要になる。

さらに重要なのが医療データの共有だ。マイナンバーカードによる本人確認と同時に「情報閲覧の同意の有無」を聞かれるようになる。同意をすればまず特定健康診査(メタボ健診)のデータから始まって、今後段階的に過去に処方された薬の情報や手術歴などに医師がアクセスできるようになる。今まで患者の記憶に頼って確認していた問診時間が大幅に削減できる。

マイナンバーカード、待望の「実利」も

患者にとってうれしい「実利」もある。16年の発行開始以降、なかなかマイナンバーカードの普及が進まなかった理由のひとつがお得度の乏しさだ。

カードを保有することの金銭的メリットは長らく、住民票などを役所窓口でなくコンビニで取れるようになり100円程度の節約につながる……という点にとどまっていた。9月から始まったマイナポイントはその点、5000円という実利がアピールして、カードの発行枚数が急速に増加している。次のマイナンバーカードが健康保険証代わりになる「マイナ保険証」の場合、実利はこれまでの100円、1000円単位に比べてケタ違いの万円単位になる可能性がある。

国民皆保険の下、日本では誰もが何かしらの公的医療保険に入っている。窓口での自己負担額はかかった医療費の一部(年齢などに応じて1~3割)にとどまり、その負担額にも1カ月当たりの上限が存在する。「高額療養費制度」と呼ばれるものだ。年齢や所得で違いはあるが一般的な所得の現役世代の場合、たとえ100万円かかっても1カ月の医療費の自己負担額は8万7430円がマックス。残りは保険から支払われる。

ありがたい制度だが、中には知らずに損をしている人もいるという。原因が立て替え払い。窓口で一旦全額を支払って、後で手続きをして回収する仕組みのため「高齢者をはじめ中には制度を理解していない人もいるし、健康保険からお知らせが来てもそのままにしてしまうケースもある」(社会保険労務士の井戸美枝さん)という。

窓口での立て替え払いが不要に

また、一時的であれ立て替えをしたくない場合、自分の加入する公的健康保険で手続きし「限度額適用認定証」なるものを取得しておけば限度額を払うだけですむ。

このやや専門的過ぎて知らない人も多いプロセスが「マイナ健康保険証」で不要になる。病院側はあらかじめ患者の所得状況に応じた負担上限額を把握してそれだけを請求、残りを保険に回す事務が簡単にできるようになる。高額療養費制度を使いこなしていなかった患者の負担額に換算すれば万円単位のメリットだ。

ようやく具体的な利便性が見え始めたマイナンバーカード。今後は情報管理に対する関心も一段と高まる。マイナンバーの利用は法律で厳しく規定されており、現在の使用分野は税と社会保障、災害対策に限られている。「それぞれの情報は分散管理されており健康保険証との一体化を機に医療データが流出する心配はない」(厚生労働省)というが、自分の医療データに関する国民の関心は高い。マイナンバー制度とそのセキュリティーのあり方に関して分かりやすく説明して理解を得る努力がいよいよ欠かせない。

山本由里(やまもと・ゆり)

1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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