米州開発銀、総裁に初の米出身者 中国進出をけん制

2020/9/14 20:30
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【メキシコシティ=宮本英威】米州開発銀行(IDB)の次期総裁に、米国出身者が初めて選出された。中南米の経済発展を支援する同行のトップはこれまで、中南米出身者が務めてきた。今回、米国が総裁ポスト確保に動いた背景には、2000年代に入り域内で影響力を広げてきた中国をけん制する狙いがある。

米州開発銀行の次期総裁に選出されたマウリシオ・クラベルカロネ氏=同行提供

米州開発銀行の次期総裁に選出されたマウリシオ・クラベルカロネ氏=同行提供

IDBは12日、オンライン会合を開き、米国家安全保障会議(NSC)上級部長(西半球担当)のマウリシオ・クラベルカロネ氏を次期総裁に選んだ。ムニューシン米財務長官は声明で「新型コロナウイルスからの回復の支援、経済発展でIDBと協力したい」と、選出を喜んだ。

今回の総裁選は、選出の過程で域内に摩擦が広がった。米国がクラベルカロネ氏の擁立を発表したのは6月16日だ。この発表以降、ブラジルのカルドゾ元大統領やコロンビアのサントス前大統領ら中南米の有力者がこぞって反対の意向を表明した。

IDBの業務が始まった1960年以降、総裁職は中南米出身者が務めるというのが慣例だったためだ。1953~61年に米大統領を務めたアイゼンハワー氏が、中南米出身者がIDBで指導的地位に就くべきだと発言した経緯もある。

その後も、メキシコ財務公債省やチリ外相らから、総裁選の延期を求める声が相次いだ。表面上は「新型コロナで十分な議論ができない」ことを理由にしていたが、実際には、11月の米大統領選の結果次第で、米政府の方針が変更される可能性を期待した動きだった。

特に左派政権で、米国と対立することも多いアルゼンチンからは、域内の各国政府に対して様々な働きかけが行われたもようだ。ただ総裁選延期への支持は十分には広がらず、同国政府は10日、投票を棄権するとの声明を公表した。

米国が総裁ポストにこだわった背景には、中国の域内への影響力を抑制する狙いがある。

米シンクタンクのインターアメリカン・ダイアログによると、2005~19年の中国国有銀行による中南米への融資は年平均で91億ドル(9600億円)。19年のIDBの融資と保証の合計(129億ドル)は下回るが、存在感は高まっている。IDBは19年3月に、出資国でもある中国の成都で年次総会を開く予定を立てたが、米国の反対で延期となった。

中南米地域が世界人口に占める比率は8%だが、新型コロナの感染者は世界の約3割を占める。国連は新型コロナの影響で、20年末までに域内の貧困層が4500万人増え、合計2億3千万人になると分析する。開発金融機関としてのIDBが重要な役割を果たす局面だけに、次期総裁が域内国とどう融和していくかが重要になる。

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