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お金の流れから企業価値を算定 DCF法の基礎を学ぶ

ろくすけさんの勝てる株式投資入門(8)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。

●ろくすけ 実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営(容姿は本人と変えています)。
●ゴロー 大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年(架空)。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。
●ナナコ ゴローの妹(架空)。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに株式投資の基本を学ぶという役どころ。

株式投資で投資すべきなのは、事業価値が大きく、かつそれが増えていく企業の株であるとろくすけさんに教わったゴローとナナコ。では、企業の事業価値はどのような要素で決まってくるのでしょうか。今回は、この点を確認していきます。

ゴロー 事業価値は、企業が事業を通して今後各年度で上げる稼ぎを予測した上で、そこから算出する。そういう説明を前回に受けました。事業価値の大きな企業は、やはり業容を急拡大して勢いよく成長している企業でしょうか。

ろくすけ それは、企業の事業価値を算出する上で大事なポイントだ。その点を考えていくために、株の話からは離れるけれども、2人には次の問題を考えてほしい。

Q ある企業が、毎年1万円の利息を永久に支払う社債を発行したとします。この社債はいくらだったら買おうと思いますか?

期待するリターンの水準を示す「期待収益率」

ゴロー 株ではなく社債ですか。う~ん。永久に1万円の利息をもらえるんだったら、50万円を支払ってもいいかなあ。社債だと利回りが重要になりますよね。50万円の価格で1万円の利息なら、利回りは1万円÷50万円×100=2%になります。

銀行預金とは比較にならないほどの高利回り。確か30年物の国債利回りは0.6%程度と新聞記事で目にした気がします。それと比べてもかなり高いです。

ナナコその社債を発行する企業の業績が悪化したら、利息が減ったり、利払いが滞ったりすることはありませんか。倒産でもしたら、利息も支払われなくなりますよね。そうしたリスクを考慮すると、20年で元を取るつもりで、20万円でどうでしょう。利回りは、1万円÷20万円×100=5%です。

ろくすけ 50万円と20万円か。大きく差がついたね。これほどの差が生まれた理由について改めて考えると何だろうか?

ナナコ 私はアニキとは違って、利息が減ったり、利払いが滞ったりする事態を心配したからでしょう。それで価格を低くしたから、利回りが高くなりました。

利息が減ったり、利払いが滞ったりすることを心配しなければならなくなるのは、社債を発行する企業の経営が危ぶまれる時でしょう。その企業の経営が健全で利息が支払われる確度が高いほど、社債を買いたい人も多くなるから価格は上がり、利率は下がる。逆に経営が不安定で利息が支払われる確度が低くなると、価格は低くなり、利率が高くなるのでは?

ろくすけ その通りだ。利息を得られないリスクが高くなるほど、より多くのリターンがないと割に合わなくなるから、高い利回りを要求することになる。ゴロー君の2%とナナコちゃんの5%という利回りは、2人がそれぞれこの社債に期待したリターンの水準を示しているわけだ。

これを「期待収益率」という。期待収益率が高いほど、利回りは高くなり、価格は下がる。逆に低いほど、利回りは低くなり、価格は上がるという関係になる。この期待収益率は、社債に限らず様々な金融商品の価格、さらには企業の事業価値の算定にも使われる。

ゴロー いよいよ本題ですね!

ろくすけ右下の現在価値の計算式[1]をよく見てほしい。前回、企業の生み出す価値は企業におけるお金の流れを基に算出できると説明したのを覚えているだろう。これは、企業におけるお金の流れを示すキャッシュフロー(CF)から、企業の事業の現在価値を算出するための計算式だ。

社債の価格を求める計算式と見比べると、利息がキャッシュフロー、利率が期待収益率、価格が現在価値にそれぞれ置き換わった形になっているのが見て取れるだろう。

ゴロー キャッシュフロー、期待収益率、現在価値……。キャッシュフローは直訳すると「お金の流れ」という意味になる。それは僕でも分かりますが、具体的にはどのようなものなのですか?

ナナコ 企業の事業や投資で得られた収入から外部へ支払った支出を差し引いて、手元に残る資金の動きを示すものよ。過去のある時点と比べて、事業や投資によって資金がどれだけ増減したかを計算するの。収入が支出を上回れば、キャッシュフローはプラスになり、逆の場合はマイナスになる。

キャッシュフローには、(1)営業キャッシュフロー(2)投資キャッシュフロー(3)財務キャッシュフロー──の3種類がある。本業の営業活動でキャッシュ(現金)を稼いで営業キャッシュフローがプラス、設備投資などの支出が資産の売却などの収入を上回って投資キャッシュフローがマイナス、借金の返済などで財務キャッシュフローがマイナスになっている企業が、一般に優良企業と見なされるのよ。

ゴロー おまえ、ちゃんと勉強しているなぁ……。

期待収益率と割引率は同じもの

ナナコ この計算式は、「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)」というキャッシュフローから企業の価値を算定するものですよね。企業の買収を検討する時に、その企業の価値を算定して、買収価格を見積もるのに使われると大学の講義で習いました。あっ、講義では期待収益率ではなく割引率という呼び方をしていました!

ろくすけ その呼び方もあるんだ。将来に生まれるキャッシュフローを基に、将来にかけて価値が増える分を割り引いて現在価値を求めるので、割引率ともいう。

例を挙げて説明すると、ある金融商品の元本が10万円で、利率、すなわち期待収益率が10%だったら、その金融商品の1年後という将来の資産価値は、10万円×1.1(100%+期待収益率10%)=11万円になる。

逆に1年後の資産価値の11万円から現在の価格を求めると、11万円÷1.1(100%+割引率10%)=10万円という形になる。この期待収益率と割引率がイコールの関係にあることは、よく出てくるから覚えておこう。

ゴロー 分かりました!

価値が高まる3パターン

ろくすけ ここで下の現在価値の計算式[2]を見てほしい。これは、キャッシュフローが常に同じではなく、一定の割合で永久に増加していくことを前提に織り込んだものだ。分母にキャッシュフローの増加率である永久成長率を組み込んで計算する。

例えば、ある不動産のキャッシュフローに相当する賃貸収入が年間10億円として、賃貸収入が毎年1%ずつ増えていくとしよう。期待収益率は5%にする。その不動産の現在価値は、10億円÷0.04(5%─1%=4%)=250億円になる。

ゴロー 賃貸収入が増加せずに一定だったら、10億円÷0.05=200億円だから、永久成長率が1%あるだけでも、価値が大きく変わりますね。

ろくすけ そうだね。ここで再び現在価値の計算式[2]をよく見てほしい。現在価値が大きくなるためには、それぞれの変数がどう変わればいいかな?

ナナコ分子が大きくなり、分母が小さくなればいいから、(1)キャッシュフローが増える(2)期待収益率が低くなる(3)永久成長率が高くなる──の3パターンですね。

ろくすけ 正解だ。企業の事業価値を算定する上でこの3パターンを考えることが重要になる。これも覚えておこう。

(次回に続く)

今回のまとめ
事業価値は、キャッシュフロー、期待収益率、成長率の3つで算定

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