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原監督にみる大人のジャイアンツ愛
編集委員 篠山正幸

2020/9/15 3:00
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愛だけではどうにもならないけれど、愛がなければ何も始まらない……。ますますさえる巨人・原辰徳監督のマジック采配を裏打ちしているのはプロ20年目(米球界を含む)の中島宏之(38)の再生にみられる「人」への熱情ではないか。

巨人・中島がレギュラークラスになるまで再生できたのは、原監督の愛ある起用と辛抱あってこそといえる=共同

巨人・中島がレギュラークラスになるまで再生できたのは、原監督の愛ある起用と辛抱あってこそといえる=共同

西武の主力として活躍した中島は米球界を経て、2015年からオリックスに所属。同球団の最終年となった18年は西武でレギュラーに定着して以来、自己最低の77試合の出場にとどまり、退団。19年から、3度目の「原体制」となった巨人に身を寄せることになった。

オリックス時代の最後は守備力も衰え、故障も増えていた。巨人移籍1年目の昨季も43試合の出場にとどまった。

復活は厳しい、と思われた中島が、今季61試合に出場し、規定打席には届かないものの、打率2割8分3厘、6本塁打とレギュラークラスの働きをみせている。

■根にある「おまえはやれる」

西武時代は長打力に加え、あえて詰まらせて右前に落とす打撃で、ヒットならいつでも打てる、という天才的打撃を発揮していた。あのころと比べるわけにはいかないが、感覚を取り戻しつつあるのは間違いない。

昨年来の原監督の辛抱が実った、といえる。若手の有望株が現れ「育成の巨人」へとかじを切りつつあるなか、あえて中島を起用する理由は乏しいと思われた。それでも原監督は起用の機会を探り続けた。昨年の43試合65打席という数字も原監督あってのことで、もっと出番は減っていて不思議はなかった。

今季、オープン戦で打率3割をマークした中島自身の奮起があったのはもちろんだが、この道のりには原監督が「おまえはやれる」というメッセージを送り続け、そこを足がかりに本人も自信を取り戻した、という軌跡がみてとれる。愛の力といっていいかもしれない。

中島との縁は原監督が日本代表を率いて世界一となった2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に遡る。中島は西武の同僚の片岡易之(治大、現巨人コーチ)らとともに代表に選ばれ、主力として貢献した。相手方としてまみえた08年の日本シリーズを含め、原監督の脳裏には無類の勝負強さが刻まれていたに違いない。

10年越しの思いが実った形での中島獲得だった。同じく09年のWBCで功績のあった岩隈久志も巨人は獲得している。こちらは活躍できておらず、愛あるところに花が咲く、とも限らないわけだが、愛がなければ何も始まらない。中島のケースはそう教えてくれているようだ。

ひたすらいちずというよりは大人のチーム愛が、原監督の「怖いものなし」の采配を生んでいる=共同

ひたすらいちずというよりは大人のチーム愛が、原監督の「怖いものなし」の采配を生んでいる=共同

2002年、長嶋茂雄監督のあとを受けて巨人の指揮を執ることになった原監督は「ジャイアンツ愛」を旗印とした。

巨人への愛で貫かれた野球人生。しかし、この2年後には当時の渡辺恒雄オーナーの「読売グループ内での人事異動」という有名なフレーズとともに記憶される"政権交代"で、堀内恒夫氏にバトンを渡すことになる。

就任1年目にリーグ制覇、日本一。2年目の03年も、優勝を逃したとはいえ、5つ貯金をしたうえでの3位だった。普通のチームなら、論をまたずに続投となる状況での退陣。

■全てを受け止める覚悟あっての采配

この思いがけない離別がもたらした衝撃のほどはうかがい知れない。だが2年の充電期間を経た06年の"第2次政権"発足以来見受けられる、定石にもOBを含む外野の声にも縛られない采配は、苦難を越えて到達した境地を示しているように思える。

愛するチームでも、風向き次第では何事も起こりうる。そんな人の心のよるべなさを見たあの一件は「若大将」のひたすらいちずなチーム愛を、一種の無常観を伴った大人の愛へと変え「怖いものなし」の采配を生んでいるのではないか。

7日の阪神戦、七回のピンチで大竹寛がジャスティン・ボーアに大ファウルを喫すると、原監督は打席の途中で大江竜聖に代えた。結果は適時内野安打。これで負けていたら、ちょっとした騒ぎになっただろう。そうしたことの全てを受け止める覚悟ができているからこその采配だ。その思い切りは、賭けにもみえた中島の起用と根っこのところでつながっている。

巨人の監督として川上哲治氏の1066勝を抜き、歴代1位の白星を積み上げた原監督。深度を増す愛の力は目下無敵だ。

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