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第一人者、歴史もので栄冠 社会と個人の対立描く

ベネチア映画祭 黒沢清監督に監督賞

黒沢清監督「スパイの妻」。蒼井優(左)と高橋一生 (C)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

黒沢清監督(65)がついに栄冠を手にした。ここ20年来、日本映画の第一人者であり続けてきたが、カンヌ、ベネチア、ベルリンの三大映画祭のメインコンペの賞には縁がなく、後進の河瀬直美監督や是枝裕和監督に先を越された。しかし映画作家としてのスケール、深い映画的教養に根ざした隙のない画面の強度はずぬけている。「スパイの妻」はその集大成と言え、北野武氏以来の監督賞はその実力に見あう。ようやく世界がクロサワに追いついた。

立教大学で映画評論家の蓮實重彦氏の薫陶を受け、自主映画を撮り始める。長谷川和彦氏、相米慎二氏の助監督を経て、1983年「神田川淫乱戦争」でデビュー。初期の黒沢組からは塩田明彦氏、青山真治氏ら立教大出身の監督を輩出した。

「CURE」(97年)で世界的な注目を集め、「回路」(2000年)がカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。「トウキョウソナタ」(08年)でカンヌ映画祭ある視点部門審査員賞、「岸辺の旅」(15年)で同部門監督賞を獲得した。

様々なジャンル映画の形式を借りながら、一貫して描いてきたのは人間と人間、人間と社会の関係だ。その関係の進展ではなく、確かだと思っていた関係が、不確かであることに気づき、揺らぐ点に主眼をおく。そこに現代社会の不安が映る。

ホラーで注目されたが、近年はSFやメロドラマにも挑戦。「スパイの妻」は初の歴史ものだ。

上映時の記者会見に東京からリモートで出席した黒沢氏は「社会と個人の対立や共存に興味があるが、一見自由な現代では対立が目に見えたものにならない。社会と個人がはっきり対立することが描ける1940年代前半の日本を撮りたいと前から思っていた」「スパイは社会と個人に引き裂かれた存在だ。映画的な魅力もある」と語った。

確かであったと思われた夫婦の関係が揺らぎ、個人と国家の関係も揺らぐ。まさに黒沢的な主題が近代史を背景にスリリングに展開する。脚本に東京芸術大学の教え子である濱口竜介監督らも参加。作品の強度を高めた。

(編集委員 古賀重樹)

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