政策に納税者の声、地方創生の旗振りを 新政権に望む
(検証・中部とアベノミクス)

2020/9/11 20:10
保存
共有
印刷
その他

安倍晋三首相の後任を決める自民党総裁選は14日投開票の予定だ。アベノミクスの評価と次期政権の課題を中部の有識者に聞いた。

■政策に納税者の声を(全トヨタ労働組合連合会の鶴岡光行会長)
 ――安倍政権が中部の自動車産業に与えた影響をどうみますか。
 「長期の間政権にあったが、トランプ米大統領が北米自由貿易協定(NAFTA)を見直したり、中国への制裁関税を打ち出したりと保護主義政策が相次いだ時期だった。安倍首相がトランプ氏との関係で日米貿易を支えてくれたのは自動車産業としてありがたい」
 「トヨタ自動車グループでは日々、生産性向上により競争力を強化しているが、過度な円高や関税によって我々の努力が吹き飛んでしまうこともあり得る。大きな変化がなく、公正な競争で収益に結びつけられたのは評価すべきことだ」
鶴岡光行 全トヨタ労働組合連合会会長

鶴岡光行 全トヨタ労働組合連合会会長


 ――「官製春闘」と呼ばれたように安倍政権は賃上げに積極的でした。
 「春季労使交渉では企業ごとに労使で話し合い、一年間の総括をしていく。それに対して政府が『賃上げすべきだ』などと介入することではない。『官製春闘』と呼ばれたが、これまでの賃上げは企業と労使が話し合いによって方向性を決めてきた成果だ」
 「(新政権下になる)次の春交渉に向けても、労使で話し合うのが基本になる。コロナ禍の厳しい中での話し合いになるので、新たな働き方や『今後自分たちの収入はどうなるのか』といったことを話し合っていく」
 ――次期政権に期待する政策は。
 「納税者の声をしっかり聞いて、日本全体の方向性を決め、かじを取っていってほしい」
 ――コロナ禍でトヨタグループの収益は。
 「トヨタ自動車は足元では、昨年と同じレベルの国内生産台数に戻ってきたが、国内販売は8~9割程度にとどまる。我々の加盟組合ではトヨタ以外のメーカーとの取引もあり、まだ回復途上という大変厳しい状況だ」
 「消費増税後の景気対策で導入された自動車購入への税制優遇を延長するという話もある。経済を支えている車産業がどうしたら厳しい状況下で販売・生産を回復できるのか注視していきたい」(11日の記者会見を基に構成)

■地方創生の旗振り期待(愛知中小企業家同友会の加藤明彦会長)
 ――中小企業から見たアベノミクスの評価は。
 「賛否両論があったと思う。新型コロナウイルス禍での雇用調整助成金、無利子・無担保融資といった迅速な資金繰り対応は中小企業の経営を非常に支えてくれた」
 「ただ全体としては、国民の将来不安を払拭するには至らなかったのではないか。2019年の家計の消費支出(2人以上の世帯)は00年比で1割減った。社会保障費の増加や消費増税も相まって、節約志向に歯止めがかかっていない。失業率は下がった一方、非正規雇用者も多く生まれた」
 ――経済成長により低所得層にも恩恵が及ぶ「トリクルダウン」理論も注目されました。
 「確かにこの数年の中部地方ではトヨタ自動車の業績が好調で、サプライヤーにも恩恵が及んだ。それはトヨタ本体もサプライヤーも同時に知恵を絞り、汗を流して利益を生み出した結果だ。単純に大企業がもうかれば中小企業まで潤う仕組みがあるとは思わない」
 ――次期政権に期待したい政策は。
 「少子化対策と地方創生だ。日本人の国内出生数は19年に86万人と、1899年の統計開始以来で初めて90万人を下回った。人口は東京一極集中が進み、中部を含め多くの地方は減少している」
加藤明彦 愛知中小企業家同友会会長

加藤明彦 愛知中小企業家同友会会長


 「この2つはセットで解決できる。合計特殊出生率を見ると、土地が狭く自然も少ない都心部ほど低い。地方での雇用促進や、リモートワークなどを活用した移住などを政府がさらに旗振りすれば、出生率は自然と上がっていくだろう」
 ――地方は都心部に比べて中小企業の比率が高いので、地方創生は人手不足や事業承継に直面する中小に役立ちます。
 「中小企業庁を『中小企業省』に昇格させてはどうか。中小企業の従業員は全企業の7割を占めるにもかかわらず、同庁はいまだに経済産業省の外局にすぎない。省への昇格を通じ、中小企業の経営改善や新事業の創出などを支援してくれれば、日本経済はさらに豊かになるはずだ」(聞き手は野口和弘)
保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]