坂茂の透ける公園トイレ デザインで課題を解決

文化往来
2020/9/25 2:00
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東京・渋谷の公園にあるカラフルなガラス張りの建物。近づいてみると、中に見えるのはなんと便器だ。「暗い、汚い、臭い、怖い」といった公共トイレの印象を変えようと日本財団が渋谷区と進める「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環で設置された。通常時はスケルトンになっており、中からカギをかけるとガラスが曇る仕組みだ。同プロジェクトには安藤忠雄ら16人の建築家やデザイナーが参加。2021年の夏までに、17カ所の公共トイレがリニューアルする予定だ。

透けるトイレを設計したのは建築家の坂茂だ。坂は「公共のトイレを使うとき、心配なことが2つある。まずは、汚くないか。そして、中に誰も隠れていないか。最初から透明であれば、安心して使うことができる」と話す。中が汚れると一目で分かるため、管理もしやすい。ガラス張りのため、夜になるとあんどんのように周囲を照らす。防犯にも役立ちそうだ。「デザインには好みがあり好き嫌いが分かれる。しかし、論理的であり、機能面の問題を解決するデザインは強い」(坂)。複数の課題を一気に解決するアイデアだ。

坂は長年、紙管を使い被災地や海外の紛争地帯で仮設住宅を建てる活動を続けている。紙管は安い、軽い、手に入りやすいなど多くのメリットがあるが、坂が手がけるまで建築に使った例はなく、実験を繰り返し実用化した。今年7月の熊本での豪雨災害でも避難所に紙管と布を使った間仕切りが採用され、プライバシーの確保だけでなく、コロナ禍の現在では感染防止にも大きな役割を果たしている。坂は「デザインを最も妨げるのは先入観」と言う。自由な発想で、問題を解決するためにデザインする。一見、奇抜に見える透けるトイレにも、こうした姿勢が確かに感じられる。

(赤塚佳彦)

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