日本は景気拡大期 安倍首相辞任でも相場上昇は続く

株式投資
日経マネー
日経マネー連載
増やす
2020/9/14 2:00
保存
共有
印刷
その他

8月28日、株式市場に動揺が走った。言うまでもなく、引き金を引いたのは安倍晋三首相の突然の辞任表明である。日経平均株価は一時前日比600円超の下落となった。「アベノミクスの終焉」を材料にした売りということだろう。ただ、私はこの影響は一時的なものにとどまるとみていたし、事実、足元の株価は堅調に推移している。日本の株式市場を動かす要因の大半はグローバルな経済環境であり、政権が代わってもこの影響は大きくないからだ。

そもそも、アベノミクスで本当に日本株は上がったのだろうか。日銀の異次元緩和は確かに一定の効果はあっただろうが、2%の物価上昇率という目標は遂に達成されなかった。アベノミクス自体は正しい方向を向いた政策だったが、成功したとも言い切れないのだ。

■安倍政権の株高は幸運が味方した?

結局、第2次安倍政権の発足がたまたまグローバル景気が反転上昇に転じるタイミングと重なったのが最も大きかったと言えるだろう。いわば幸運が味方した。英調査会社のIHSマークイットが算出するグローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)を見ると、この傾向は鮮明だ。アベノミクス初期におけるグローバルPMIと日経平均のチャートは驚くほど重なっている。

安倍首相が辞任を表明した現在においても、グローバル景気とそれに伴う世界の金融政策が日本株にとっての最大要因であることに変わりはない。首相が代わっても、日銀の金融政策がそれだけを理由に大きな方向転換をするとも考えにくい。そして、超緩和的な金融政策が長期にわたって維持される現在の経済環境は、間違いなく相場にとっては追い風だ。

安倍首相の辞任表明前まで日本株が堅調だった理由も、まさにこの点にある。8月下旬、日経平均はコロナ急落前の水準を一時回復した。例年であれば8月は「夏枯れ」の時期。外国人の売りが最もかさむ月でもあり、アベノミクス相場開始後の平均月間リターンが1年の中で最低の月である。今年については、米大統領選や米中対立激化など、政治面の不透明要因も山積していた。その中での一段高はいささか奇妙にも思える。

■経済の急回復が株価好調を支える

しかし、先に述べたように株価に最も影響を与えるのは経済環境であり、金融政策である。そう考えると、8月の株高にもちゃんとした論拠があるのが分かる。

例えば6月の家計調査だ。2人以上世帯の消費支出は前月比で13%上昇した。上げ幅は比較可能な2000年2月以降で最大で、水準はコロナ前を回復している。消費低迷は政府の緊急事態宣言などを受けた外出や営業自粛の影響で消費したくてもできなかったからであり、需要が消失したわけではない。一時的な供給ショックによる落ち込みだから、それがなくなれば元に戻るのは早い。

日本経済研究センターが実施したアンケートで、33人の民間エコノミストのうち28人が景気の「谷」は5月だったと答えた。つまり、国内景気の最悪期は過ぎたと言える。

ここでのポイントはコロナショックの下振れから回復したということにとどまらない。国内景気のピークは18年10月だった。ここから景気後退局面が始まり、5月が底だったとするならその期間は19カ月だ。これは戦後の景気後退局面の中では4番目の長さであり、コロナショックがそのクライマックスだったということになる。

つまり、既に景気後退は終わっており、日本経済は景気拡大期に入っていると言える。そう考えるなら、今後の相場が上昇基調をたどるのは自然な考えだろう。

問題はこの先も順調に回復基調が続くかということだ。それを阻むのは新型コロナの再拡大だが、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は「全国的に見れば、7月27~29日に感染拡大はピークに達した」という見解を発表した。米国でも夏に入ってコロナの新規感染者数は減少が続いている。ワクチンや治療薬についての朗報も続々と伝わる。

景気は回復が鮮明になってきており、コロナも収束の兆しが出てきた。そこに過去最大級の景気対策が打ち出され、米連邦準備理事会(FRB)は緩和策の長期化を表明した。これで株が上がらない方がおかしい。企業業績が7~9月期にV字回復したと確認されれば、相場は一段高となるだろう。

年内の日経平均予想
2万2500~2万5000円
【ここに注目】
業績の底が4~6月期と認識されることがポイント。業績回復への期待から株高の勢いは増す。

広木 隆(ひろき・たかし)

国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。

日経マネー 2020年10月号 アフターコロナの配当生活入門

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/8/21)
価格 : 750円(税込み)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]