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コロナ禍で迫るデフレ ユーロ高も加速、ECBに試練

【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は10日開いた政策理事会で、金融緩和政策の維持を決めた。欧州では消費者物価上昇率がマイナスに転じ、デフレ懸念が高まっている。ユーロも上昇傾向にあり、ラガルド総裁は記者会見で為替相場を注視する考えを示した。ECBは金融緩和を粘り強く続ける姿勢で、市場は「次の一手」を注視している。

同日公表した新しい経済見通しでは、20年の消費者物価上昇率を6月時点の0.3%のまま据え置いた。同年の成長率は同8.7%減から8%減へと上方修正した。ラガルド総裁は「必要に応じてあらゆる手段を用いる準備ができている」との考えを改めて強調した。

ECBは6月の追加緩和でコロナ対策の資産購入枠を総額1兆3500億ユーロ(約170兆円)に拡大。イタリア国債10年物利回りが1%程度にまで下がるなど、金融市場は落ち着きを取り戻し、危機の最悪の局面は切り抜けたとの見方が多い。

だが、実体経済に目を向けると、別の景色が浮かぶ。景気は確かに底を打ったが、需要の急激な落ち込みで物価上昇圧力が弱まっている。8月の物価上昇率はマイナス0.2%で4年3カ月ぶりに水面下に落ち込んだ。エネルギーと食料を除くコア指数の上昇率も低下し、デフレのリスクがじわり高まっている。

物価が上がりにくい状況が続くと、企業は設備投資や賃上げに踏み切りにくくなる。それが景気や物価をさらに冷やすという悪循環にも陥りかねない。危機対応という第1の局面は終わったが、今後は物価押し上げという第2の局面に対応する必要があるというのがECBの現状認識だ。

さらに悩ましいのが、ユーロ高だ。ユーロ相場は対ドルで5月以降に約1割も上昇し、対円でも大きく値上がりしている。原因の一つが米国の金融緩和の長期化観測だ。米国と欧州の金利差の縮小を見込んだユーロ買い・ドル売りが外国為替市場で進んでいる。

通貨高は経済のエンジンである輸出を冷やすほか、輸入物価の下落を通じて物価をさらに上がりにくくする。中央銀行は建前上、為替相場を動かすことを目的に政策を変えることはできないが、通貨高を放置すれば、物価2%目標の達成は極めて難しくなる。

デフレと通貨高に打ち勝つために、ECBはどう動くのか。1兆3500億ユーロの資産購入枠のうち、これまでECBが使用したのは5千億ユーロ。残りの枠を積極的に活用していくほか、枠の拡大や2021年6月までとしている政策の期限の延長が焦点になる。

すでにマイナス0.5%にまで下げた政策金利の深掘りには、金融機関が強く反対している。大胆な緩和をより長く続けると約束する時間軸政策も選択肢になる。

ただ、ECB内には「緊急時の金融政策手段は危機が終われば縮小すべきだ」(ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁)との意見もある。危機対応の局面では不協和音は抑えられていたが、危機感が薄れるにつれて、緩和に消極的なタカ派と積極的なハト派の意見対立が再燃しかねない。

ユーロ圏各国の国内総生産(GDP)は4~6月にそろって落ち込んだが、前期比の下落幅が1桁にとどまったドイツと傷の深いフランス、スペインとの差は大きい。国ごとに事情は異なるなかで共通の金融政策をどう進めていくかという難題も待ち受けている。

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