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米中、正面衝突避け火花 ASEAN取り込み競う

9日、オンライン形式で開かれたASEANの外相会議=ハノイ(VNA=共同)

【北京=羽田野主、ワシントン=永沢毅】日米中と東南アジア諸国連合(ASEAN)など関係国の一連の閣僚級会合で南シナ海問題を巡る米中の対立が改めて鮮明になっている。両者は正面衝突は避けながらそれぞれ原則論を展開し、ASEANの取り込みを競っている。

会合は9~12日の日程でオンラインで開いている。ポンペオ米国務長官は10日、ASEAN各国の外相との会議で「中国はASEAN各国の独立や主権、平等という民主主義的価値観を尊重していない」と批判した。

中国は石油や天然ガスなどを運び込む上でシーレーン(海上交通路)となる南シナ海を「核心的利益」に位置付け、ほぼ全域に主権が及ぶと主張している。

ポンペオ氏は中国の主張は「完全に違法だ」と改めて強調した。「米国は必ずあなたたちを助ける」と述べ、中国包囲網の構築に向けてASEAN各国に米国との連携強化を呼びかけた。

これに対し、王毅(ワン・イー)外相は9日、ASEANに日米豪なども加わった東アジアサミット(EAS)の外相会議で「2020年1~6月だけで米軍は3000機の軍機を南シナ海に飛ばし、60隻あまりの軍艦を派遣した」と警戒をあらわにした。「米国は中国とASEANの話し合いによる解決の努力を邪魔し、南シナ海の平和を損なう最も危険な要因だ」と訴えた。

こうした舌戦の裏では米中とも全面衝突を回避しようとしているフシもある。関係国の外交官は「王氏は事前録画した映像でEAS外相会議に参加した」と明かす。ポンペオ氏と直接応酬する形になるのを避けた可能性がある。

ポンペオ氏も新たな対中制裁の可能性など踏み込んだ強硬策には言及しなかった。外交筋も「これまでの発言と変わらず、想定の範囲内だった」と指摘する。

王氏はモスクワへの出張を理由に12日に開くASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議の参加も見合わせる。今回の一連の会合で米中がやりとりする場面はなくなった。

舞台裏ではASEANの取り込み合戦が激しくなっている。中国が切り札とするのは開発研究を急ぐ新型コロナウイルスのワクチン供与だ。王氏は9日のASEAN各国の外相との会議で「ワクチン(供与)はASEAN各国の要求を優先的に考慮する」と発言した。

一連の会合が始まる前に王氏や中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)中国共産党政治局員はインドネシアやミャンマーなど複数の国の閣僚と接触し、ワクチン協力を提案している。南シナ海の領有権を巡り対立するフィリピンでさえすでに中国に協力を求めている。

ポンペオ氏もASEAN外相との会議で新型コロナ対策で各国を支援すると表明した。インドネシアのルトノ外相は会議でワクチンの自国生産に向けた米国の協力に期待感を示した。同国は中国企業からワクチンを調達する方針だが、中国への依存に懸念もあり、同時に自国生産をめざしている。

ポンペオ氏は民間部門を巻き込んで地域の経済復興の取り組みに協力するとも強調した。米国務省によると、ASEAN側は米国から提供された8700万ドル(約92億円)の医療・人道支援に謝意を表明したという。

一連の会合で議長を務めるベトナムのミン副首相兼外相は「米国の建設的かつ迅速な貢献を歓迎する」と発言した。

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