生き続ける巨星の遺産(演芸評)
没後5年記念「米朝まつり」

関西タイムライン
2020/9/11 2:00
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米団治は父・米朝も重なる「親子茶屋」を口演=佐々木芳郎撮影

米団治は父・米朝も重なる「親子茶屋」を口演=佐々木芳郎撮影

桂米朝没後5年を記念して催された「桂米朝五年祭 米朝まつり」(8月19~21日・朝日生命ホール、30日・サンケイホールブリーゼ)。コロナ禍で一旦中止になり今回席数や時間も制限して開催となった。不安な状況は続くが、だからこそ、ぶれずに落語に生きた巨星を思い起こす意義はあっただろう。笑い声が響く再会になった。

メインは30日の公演。一門の面々がここぞと腕をふるう。米朝継承ネタでは南天が愉快さ凝縮の「動物園」でわかせ、南光は「骨つり」を好演。陽気だが菩提の弔いも描く物語を自在に紡ぎ、べっぴんの幽霊や石川五右衛門を鮮やかに目に浮かばせた。

米団治はこの祭に最適と言えた「親子茶屋」。自身と父の米朝がどこか重なる船場の道楽息子と一枚上手の親旦那を軽快に演じ、実に楽しげ。茶屋遊びもよき時代の華やぎだ。先代米団治から弟子の米朝が大事に伝えた噺(はなし)でもある。

名もなき庶民を普遍の情と洒落(しゃれ)精神で描き落語の真の面白さを届けた米朝。秘蔵映像コーナーではそんな口演が聞けた。珍品の「鍋墨大根」。かまどで煮炊きをした昔、鍋の底にススがついた。その鍋墨で目当ての大根に印をつけた女、八百屋の嘘を見破りそれがオチに繋(つな)がる小粋な噺だ。70代の高座だが、ハリのある声に品と滑稽味がにじみ運びの妙ではじける笑いを生む。素敵(すてき)な手本であった。

米朝さん、懐かしいと客の声。5年しか経(た)っていないのに存命の頃が愛(いと)しい昔に感じるのは激動の世のせいか。それでも、米朝の遺産は今の上方落語にしみわたり疫病をものともしない力がある。そう確信できた公演だ。米朝落語は道標として百年後も生き続けよう。いや、生き続けなくてはいけない。

(演芸ジャーナリスト やまだ りよこ)

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