気軽に鉄道旅 JR西日本の観光寝台「銀河」デビュー

関西と山陰を結ぶJR西日本の長距離観光列車「ウエストエクスプレス銀河」が11日夜、京都駅から発進した。近年増えている豪華寝台列車よりは安価で、気軽に鉄道の旅を楽しんでもらう狙いがある。新型コロナウイルスの感染拡大で4カ月遅らせての運行スタート。JR西は落ち込んでいる旅行需要を取り戻すきっかけと期待する。
京都駅長の小野佳典さんの合図とともに、銀河は午後9時18分に出雲市駅へ向かって出発した。大阪府から来た奥田絵理さんは「トワイライトエクスプレスなどの寝台特急が好きだったが、乗る前に廃止になってしまった。終点まで乗車し、帰りも銀河で帰ってくる予定だ」とうれしそうに話した。
銀河は京都駅から大阪駅を通り、島根県の出雲市駅までを結ぶ。往路、復路ともに出発駅を夜に出て、翌朝に目的地に着く夜行列車だ。週2往復程度運行する。
JR西が17年から走らせている豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」は、1泊2日で1人当たり32万円からと富裕層向け。一方、銀河はホテルでの1泊を含む2泊3日のコースで2万6千円からと比較的手ごろな価格だ。若年層や家族連れなど幅広い層を取り込む狙いがある。
銀河に使う車両は、1980年に製造され新快速などに使った「117系」を改造した。夜間の長旅を快適に過ごせるよう、横になれる上下2段の寝台や、通常の特急より前後の間隔が広いリクライニングシートを設けた。グリーン個室や女性専用の座席も用意。外装も西日本の空や海をイメージしたという瑠璃(るり)紺色でまとめた。
5月8日に運行を開始する予定だったが、新型コロナの影響で延期。運行開始にあたっては感染防止対策を徹底し、乗客は定員85人の6割程度とし、グループの日本旅行でだけ売り出した。乗客の交流を促すため6両編成のうち1両をまるごとフリースペースとしたが、イベントは当面見合わせる。

JR西は山陰を含めた西日本エリアの活性化を掲げる。銀河は車内で沿線のレンタサイクルの割引券などがセットになった「銀河パスポート」を配布し、停車駅で地元の特産品を販売するイベントを開く。イベントの中止で空いた車内のフリースペースには沿線の特産品を積み込んで運び、大阪駅で販売する。
銀河は12月以降、下関駅など山陽方面への運行も計画している。長谷川一明社長は7月の記者会見で「銀河での旅で山陰や山陽エリアの良さを感じて、また訪れてほしい」と話し、新型コロナで低迷する旅行への関心を高めたいとの思いを示した。
(金岡弘記)
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