総務会長、党最高決定機関を差配
自民党総務会長は幹事長に次ぐナンバー2に位置づけられる。総務会は党の最高意思決定機関で、国会に提出するすべての法案や条約、党の人事、運営方針は最終的に総務会の承認を得る必要がある。総務会を取り仕切る総務会長はカギを握る存在だ。


内閣が国会に法案を出す前に総務会の了承を得る「事前審査制」は1962年に確立した。池田内閣時代、赤城宗徳総務会長が大平正芳官房長官に「法案提出の場合は閣議決定に先立って総務会にご連絡を願いたい」と文書を出したことがはじまりだった。
それは党内対立を国会審議に持ち込まない知恵といえる。55年体制では自民党内で合意できれば法案は成立したも同然だった。このため総務会は全会一致を原則とし、数時間の議論の末、それでも反対する議員は退席する伝統をつくった。
全会一致の原則を変えたこともある。総務会の構造を熟知する小泉純一郎首相は政権を握ると久間章生氏を総務会長にあてた。久間氏は2005年、郵政民営化の議論で多数決に踏み切った。自民党が野党時代の10年9月には小池百合子氏が女性初の党三役として総務会長となった。
12年に発足した第2次安倍政権以降では野田聖子、二階俊博、細田博之、竹下亘、加藤勝信、鈴木俊一の各氏が総務会長に就いた。五輪相を2度務めた鈴木氏は総務会長に就く際、安倍晋三前首相から「今度はお父さんもやられたポストで支えてほしい」と打診された。鈴木氏の父、善幸元首相は通算で5年5カ月にわたって総務会長を務めた。
総務会で新三役が決まると、総裁と執行部は手をつないで写真撮影に応じるのが慣例となっている。総務会長の地位を象徴的に表す風景でもある。新型コロナウイルス下の今回はグータッチに切り替えた。
菅義偉首相が総務会長に起用した佐藤勉氏は国対委員長を務めた経験があり、与野党に幅広い人脈を持つ。