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太平洋側接近の台風増加、東京は1.5倍 温暖化影響も

気象庁が最大級の警戒を呼びかけた台風10号が6~7日に九州・沖縄地方を襲った。今年も台風シーズンが本格化し、日本への接近が警戒されている。気象庁気象研究所は8月、過去40年間のデータを解析し、太平洋側に接近する台風が増えたとする分析結果を公表した。日本付近の気圧配置の変化や海面水温の上昇などが原因とみる。地球温暖化の影響も懸念されている。

気象庁は1951年から、台風の統計調査を実施している。国内の気象台などの観測拠点から300キロメートル以内に接近する台風は1年間平均で約26個発生しており、そのうち約11個が日本に接近する。過去には室戸台風(34年)や枕崎台風(45年)、伊勢湾台風(59年)、第二室戸台風(61年)といった多数の死者や被害をもたらした台風が発生したが、ここ半世紀は猛烈な台風は上陸していない。

気象研の山口宗彦主任研究員らの研究チームは1980~2019年の過去40年間の観測データを使って、日本に接近する台風の特徴を解析した。その結果、太平洋側の地域で、前半20年間と比べて後半20年間の台風の年平均の接近数が増えていた。研究チームは要因として、太平洋高気圧が日本の南海上で西に約500キロメートル、北に約300キロメートルも張り出していたことを指摘する。

主要都市では、東京が台風の接近数が最も増えていた。前半の年平均1.55個から、後半には同2.35個と1.5倍となった。静岡は1.4倍、名古屋は1.3倍、和歌山と高知は1.2倍に増えた。

勢いが強い中心気圧980ヘクトパスカル未満の台風に絞ると、東京への接近数は前半に比べて後半は2.5倍となった。東京への接近時の海面水温を調べると、後半ではセ氏27.2度と前半の値から1.3度上がった。さらに大気中の水蒸気量の増加、上空と地上付近の風の差が小さいといった、台風の発達に適した条件がそろっていたとしている。

研究チームの山口さんは「今後、この調子がずっと続くというわけではない」と話す。あくまで過去40年の観測データに基づいた結果でしかないからだ。今後はシミュレーションなどを使って、温暖化をはじめ、太平洋の海面水温にみられる10年規模のエルニーニョ現象やラニーニャ現象による変動の影響を詳細に解析する方針だ。

国際的な温暖化の研究でも、台風の発生数への影響を指摘したものがある。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は13~14年公表の「第5次評価報告書」で、21世紀末には地球全体でみると台風などの熱帯低気圧の発生数が減少または変化しないものの、強い熱帯低気圧の発生数は増え、その最大風速や降水強度が増す可能性が高いと予測した。東・東南アジアなど多くの地域で、上陸する台風の中心付近で降水がより極端になると予測する。

18年公表の別の報告書では、温暖化の進行との関連を指摘した。産業革命前からの気温上昇が1.5度の場合よりも2度の場合の方が、世界全体の熱帯低気圧の発生数は少ないが、非常に強い熱帯低気圧の数は増えるとした。

ただ、温暖化と熱帯低気圧の関係を分析する世界の11人の著名な研究者が20年に発表した論文では、「温暖化によって1年間に世界で発生する熱帯低気圧の総数が減少するか」という問いに対し、各自の見解が分かれた。信頼度が「中~高」で確からしいとしたのは3人で、1人が「中」、7人が「低~中」だった。

防災の観点では、台風の移動速度も重要だ。遅ければ、各地で台風の影響が長引くからだ。気象研などの研究チームは1月、今世紀末には日本のある中緯度帯を通過する台風の移動速度が平均で約10%遅くなるとの予測を出した。

複数の気候シミュレーションの結果をまとめたデータベースを利用した。1951~2010年の気候を再現する実験結果と、実際の観測データから求めた台風の移動速度を比較し、高精度で再現していることを確認したという。

再現実験の計算モデルを使い、厳しい温暖化対策をとらず、21世紀末の地球の平均気温が産業革命から4度上昇する場合の影響を計算した。東京付近の緯度帯(北緯35~40度)では、台風の平均移動速度が現状の毎時35.68キロメートルから同31.66キロメートルへと11%下がる結果になった。

温暖化で大規模な大気の流れが変わり、日本上空の偏西風が北上する。こうして台風を動かす風が中緯度帯で弱くなることが移動速度を下げる要因として考えられるという。山口さんは「降水の強化との相乗効果で積算降水量が将来増大する可能性がある」と指摘する。(浅沼直樹)

 

台風


 熱帯の海上では上昇気流が発生しやすく、次々と発生した積乱雲が多数まとまって渦を形成し、熱帯低気圧となる。このうち北西太平洋または南シナ海にあり、最大風速が毎秒約17メートルを超えたものを「台風」と呼ぶ。
 台風の強さは最大風速をもとに「強い」「非常に強い」「猛烈な」などと区分し、大きさは強風域の半径をもとに「大型」「超大型」などに分ける。
 台風は地球の自転の影響で北へ向かう性質がある。東風が吹く低緯度では西に移動し、太平洋高気圧の周りを北上して中・高緯度に達すると上空の強い西風(偏西風)によって速い速度で北東へ進む。日本付近に近づくと海からの水蒸気の供給が減り、熱帯低気圧や温帯低気圧に変わる。

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