100均グッズで災害乗り切る 専門家推薦、10の防災術

台風や地震で被災し、停電や断水に見舞われると自宅は無事でも普段通りの生活を送るのが難しくなる。防災用品を購入するなど万全の備えをしておきたいが、実は100円ショップが扱う商品でもできることがたくさんある。お薦めの100均防災術を専門家が選んだ。
1位 消臭バッグで汚物対策
災害発生時はごみの収集が遅れたり、止まってしまったりすることがある。「臭い対策は避難生活での課題の一つ」(坂口隆夫さん)。使用済みのオムツや生理用品、ペットのふんを入れる消臭袋があると、悪臭を発するごみを入れておける。「ゴミなどの汚物のほか、汚れた衣服など臭いが気になるものを入れるのに適している」(宮丸みゆきさん)
断水時、自宅のトイレの便器にセットする簡易トイレを使う際にも重宝する。玉木貴さんは「簡易トイレ処理袋をより多くの回数使えるようにするため、拭いたペーパー類を別の廃棄袋に入れる」とアドバイスしており、消臭袋があると分けて入れられる。
(1)写真の商品を扱う100円ショップはセリア(キャンドゥ、ワッツにも類似の商品あり)
2位 高密度ポリエチレン袋を使って調理

熱に強い高密度ポリエチレン製の袋に食材を入れる調理法はライフラインが止まったときに便利だ。「この調理法を知っているかどうかで被災生活が変わる」(岡部梨恵子さん)。例えばあんパンを適当にちぎって入れ、水または牛乳を加えてもみ混ぜて、袋の空気を抜きながら上部で縛る。鍋の水が沸騰したら弱火に。袋ごと入れて15分ゆでればもちもちの「パンがゆ」になる。湯は繰り返し使え、川の水や雨水でもいい。「災害時に温かいものが食べられるのは心がほっとするのでお勧め」(辻直美さん)
袋に早ゆでパスタとお湯(または水)を入れ、指でパスタがちぎれる程度にやわらかくし、水分を捨ててから、あえるだけのパスタソースを絡めるのも簡単。袋は高密度ポリエチレンを使っていると記載されているもので「キッチンパック」などの名称で売られている。
(1)4社(ダイソー、セリア、キャンドゥ、ワッツ)全て
3位 皿やまな板にラップフィルムをかけて

水道が使えない状況では汚れた食器やまな板が洗えなくなるため、節水のためのノウハウはなるべく知っておきたい。「断水中は『汚さない』が大原則」(アベナオミさん)。調理や食事の際に、食器やまな板にラップフィルムをかけておき、使用後はラップごと捨てれば洗い物を出さなくて済む。「節水テクニックとして定番。食中毒対策としても重要」(高荷智也さん)だ。
ラップは「手に巻いて食品配布にも使用できる」(山村武彦さん)といった用途も。他にも「三角巾や包帯などの応急手当てに使え、腹巻きや(目や顔面を保護する)ゴーグルの代わりにもなるなど災害時には多目的に活躍する」(国崎信江さん)といい、多めに用意しておきたい。
(1)4社全て
4位 ごみ袋とペットシーツで簡易トイレ

「災害時のトイレ対策は大きな課題」(甘中繁雄さん)。自宅のトイレの水が流せなくなったら、ごみ袋を2枚重ねて便器にかぶせ、その中に吸水面を表にしたペットシーツを敷く。使用後は内側のごみ袋をはずして捨てる。
ごみの収集が止まったら自宅に保管することになるため、悪臭を少しでも抑えたいのであれば「消臭機能がある袋付き携帯トイレの方が良い」(アベさん)との指摘もある。「本来は非常用トイレを備蓄するのが望ましいが、どうしてもない時にはお勧め」(宮丸さん)。
(1)ゴミ袋は4社全て。ペットシーツはセリア、ダイソー、ワッツ
5位 レインウエアを防寒着に

水害時、雨にぬれると体温が奪われ、体力低下につながる。冬場は防寒対策も必須だ。レインウエアは「内側にセーターを着たり、ブランケットを組み合わせたりすることで高い保温効果が得られる」(高荷さん)。防寒のために「帽子や厚手の靴下もあるといい」(山村さん)
レインウエアを着る場合には結露で下の衣服がぬれないように注意しよう。「上下別のものは動きやすく保温性もある。家族全員分そろえても高額にはならない」(別府茂さん)。レインウエアは破れやすいのでさらに上から1枚、羽織るものを着るとより安心だ。
(1)4社全て
6位 ウエットティッシュで全身を拭く

ライフラインの寸断が長引き、シャワーや入浴ができない時に「節水対策として有効」(高荷さん)。不衛生な生活が続くと健康被害を引き起こすリスクもある。玉木さんは「女性を中心にぼうこう炎、さらに重症化すると命に関わりかねない腎盂(じんう)腎炎になることもある」と指摘。全身を拭くには一般的なウエットティッシュより大きめで体専用の「からだふき」を薦める。
ほかに「赤ちゃんのお尻ふきだと肌に優しい」(宮丸さん)。アルコールを含むウエットティッシュは手指消毒に使おう。どちらも100円ショップで買える。
(1)4社全て
6位 布粘着テープに書き置き

スマートフォンや携帯電話の電池が切れた場合のアナログな伝達手段も確保しておきたい。家族への伝言メモ用なら、紙や付箋より丈夫な布粘着テープが活躍する。外から見える場所に書き置きを残すと空き巣被害につながりかねないため「家族や親族など関係者だけが見られる屋内に残しておく」(玉木さん)。
「付箋紙の代用としてだけでなく、ガラス片を集めるなど用途は広い」(別府さん)。「損壊した箇所の応急処置、物の固定、掃除などあらゆる場面で活躍するので多めに買い置きを」(国崎さん)。
(1)4社全て
8位 リュックにごみ袋を重ね給水所へ

断水が続くと給水所が設けられ、無料で水を入手できる。ただ、容器は自分で持参することが多い。水をもらうときは専用の容器がなくてもリュックにポリエチレンのゴミ袋を入れる方法がある。「水は手で持つと大変なので背負うのがいい」(岡部さん)とポリタンクにはないメリットもある。
リュックを大きく広げ、中にごみ袋を2枚重ねて水漏れを防ぐ。リュックの容量の半分から8分目を目安に水を注ぎ、内側のごみ袋をきっちりと一つ結びにする。外側も同じ要領で結ぶ。「両手が空くのは災害時に大切なポイント」(辻さん)だ。
(1)4社全て
9位 凍った保冷剤を冷蔵庫に

冷蔵庫内の貴重な食品を無駄にしないために、電気が止まったら早めに対策を講じたい。「東日本大震災の時は保冷剤がなくて、当日降った雪を袋に集めて保冷剤代わりにした」(アベさん)というエピソードもある。
生鮮食品から使うなど、傷みやすさを考えて調理することも重要だ。「傷みやすい食材はカセットコンロで煮たり焼いたりして保存期限を延ばし、時間を稼ぐ」(山村さん)。冷蔵庫も冷凍室も開閉は最小限にして冷気を逃さないよう心がけるという手もある。保冷剤は暑い季節、冷房が使えない時に体を冷やすのにも使える。
(1)4社全て
10位 使い捨て手袋で汚物処理

「災害時は自宅でも避難所でも衛生管理が重要」(甘中さん)だ。医療機関に受診するのが難しくなることも想定されるので、感染症には気をつけよう。
「災害時は衛生環境が悪くなるため、使い捨て手袋は必須」(宮丸さん)。新型コロナウイルスは感染者の便にも含まれることが分かっている。料理や掃除用のポリエチレン製の使い捨て手袋は、食中毒や感染症を防ぐのに役立つ。「排せつ物や汚物の処理のみならず、食材の調理・配布や傷病者の手当てなどにも活用できる」(坂口さん)。
(1)4社全て
被災したと仮定 事前に試そう
地震や台風などに備えて、防災用品を用意している人も多いだろう。専用のグッズだけでなく、100円ショップでも気軽に買える日用品や雑貨を使った防災術を使いこなせるようにしておくと便利だ。国際災害レスキューナースとして、国内外の被災地に赴いてきた辻直美さんは、被災時に困ることとして「明かりと暖の確保、排せつ、食事」の4点を挙げる。
「防災用品を買ったから安心、ではない。どうやって使うか、知識と技能、経験がないといざという時に活用できない」(辻さん)。今回紹介した100均グッズを買い置きしている家庭もあるだろう。被災したと仮定して防災術を試しておけば、実際に電気やガスなどが止まった時の不安やストレスも和らぐし、改善点がみつかるかもしれない。
災害が発生すると入浴や手洗いがままならず、不衛生な生活になりがち。新型コロナウイルスの感染が収束しない現状では、手指を消毒できるアルコール入りの製品や使い捨ての手袋を用意しておくなど、感染症対策も意識しよう。
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今週の専門家
(生活情報部 関優子)
[NIKKEIプラス1 2020年9月12日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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