テレワーク時代の仕事着は「見える部分だけビジネス」

テレワークが中心になり、多くの人が体感した変化の1つは服装かもしれない。オンライン会議に対応するために上半身は着替えるが、下半身は寝間着のままという人もいるようだ。「WFH Jammies」は、そんなオンライン会議用に開発された在宅ワーカーのための新しい「仕事着」だ。

画面越しに話す人から見れば、一般的な襟付きシャツに見えるが、画面から見えない下の部分はスウェット素材。いわば「ルームウエアに見えないルームウエア」で、商品コンセプトは「上はビジネス、下はリラックス。」だという。

クラウドファンディングで注目
WFH Jammiesは、広告やテレビ番組、プロダクトといったさまざまな領域のクリエイティブ開発をするWhatever Inc.(東京・港)による自主開発商品である。開発のディレクションを担当し、同社のチーフクリエイティブオフィサーである川村真司氏は「感染症が拡大するなかで自社メンバーで主体的に何かできることがないかと考え、2020年3月の終わり頃に全社メンバーでブレーンストーミングをした。そのなかで出てきたアイデアの1つがWFH Jammiesだった」と、プロジェクトのきっかけを話す。
アイデアは、社内デザイナーの伊藤太一氏が発案した。伊藤氏の「妻がオンライン会議のたびに、いちいち着替えたり化粧をしたりしているのが大変そうだった。見えているところだけビジネス用で、見えないところはカジュアルな服が作れないか」という発言を受けて、すぐに商品化に取り掛かったという。
デザインや打ち合わせはすべてオンラインで対応し、2020年5月にはクラウドファンディングのKickstarterで開発費用を集め、目標値の20万円を大きく超えた90万円以上を獲得。海外からも反響は大きく、半数以上は日本以外からの注文だったという。米国のテレビ局やカナダのラジオ局も注目し、取材が入ったそうだ。
「ネタ」にとどまらないために
服のデザインと製造は、ファッションブランド「LOKITHO(ロキト)」のデザイナーである木村晶彦氏が担当した。シンプルなデザインだからこそ、素材の選び方や縫製の仕方などにはこだわったという。

「一番気をつけたのは、単なる『ネタアイテム』にならないようにすること。例えばコスト面だけ考えればシャツのプリントといった手法で作ったほうが簡単だが、着心地のことを考えてシャツ素材とジャージ素材を縫い合わせる手法を採った。ポケットに見える部分も変なところで切れているから実用性はないが、ディテールの解像度を高めるために付けている」と細部まで配慮した。WFH Jammiesという商品名のWFHは「Work from Home」の意味で、文字通り「自宅で働くための部屋着」になる。
ユニセックスに着用できるよう、M/Lでサイズ展開し、カラーバリエーションも用意した。今後は自社ECサイトで発売する予定で、価格は9900円(税込み)だ。また7月28日に東京・六本木にオープンしたニューヨーク発のセレクトショップ「New Stand Tokyo」でも販売している。
(ライター 角尾舞、写真提供 Whatever Inc.)
[日経クロストレンド 2020年9月1日の記事を再構成]
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