/

GAFAのフィンテック参入 狙うは顧客データ

GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)がオンライン決済などのフィンテック事業に相次ぎ参入している
CBINSIGHTS
米IT大手のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)がオンライン決済などのフィンテック事業に相次ぎ参入している。決済データを集めることで消費者の需要動向を分析できるほか、企業からのデジタル広告の収益増も期待できるからだ。オンライン決済が急速に普及しているインドなどが主戦場になっている。CBインサイツがGAFA各社の動向を探った。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

米グーグルは米金融大手シティーグループと共同で当座預金口座サービスの導入に取り組んでいることを明らかにしている。米アップルは米投資銀大手ゴールドマン・サックスと提携してクレジットカード事業に乗り出した。米フェイスブックは決済サービス「フェイスブックペイ」の提供を開始し、デジタル通貨の発行に向けて野心的な第一歩を踏み出した。各社はなぜ突如としてフィンテックに参入したのか。

この背景にはフィンテックのスタートアップがここ数年で急増し、市場の勢力図が変わったことがある。ベンチャーキャピタル(VC)の出資を受けるフィンテック企業への2018年の未公開株投資額は前年比2倍以上の計410億ドルに達した。新興勢のデジタルサービスは既存の個人向け融資をにわかに脅かしている。

フェイスブック、SNS(交流サイト)に決済サービスを導入

フェイスブックは決済事業に巨額の費用を投じ、系列SNSに決済サービスを組み込む計画を進めている。こうした取り組みを担う決済部門「フェイスブック・ファイナンシャル(F2)」を立ち上げた。同社の取り組みにはフェイスブック、対話アプリ「メッセンジャー」、写真共有アプリ「インスタグラム」に搭載される予定のフェイスブックペイを通じた従来型の決済インフラと、対話アプリ「ワッツアップ」内の決済サービス「ワッツアップペイ」がある。さらにデジタル通貨「リブラ」とリブラに対応した電子財布「ノビ(旧称カリブラ)」で、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した国際決済サービスへの参入も目指している。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は1月の決算発表で、決済は中核事業の広告に還流するため、自社の決済戦略にはコスト競争力があると自信を示した。

ザッカーバーグ氏は「ワッツアップやメッセンジャーでもっと多くの決済を完了できるようになれば、企業はそこにさらに広告費を投じる価値を見いだすだろう。このため、現時点では決済手数料を無料またはできるだけ安くすることに力を入れている」と説明した。

フェイスブック幹部、決済への言及増加 (15年1~3月期から20年4~6月期までのフェイスブックの決算発表での「決済」への言及回数)

現時点でフェイスブックペイの取り組みは、系列SNSのアプリ内決済(米ペイパルのスマートフォン決済アプリ「ベンモ」のような機能)にとどまる。これにより、ターゲット広告に使う決済データを収集できるからだ。一方、ワッツアップは世界で利用者を増やすための成長の原動力になるだろう。

ザッカーバーグ氏は2月、ワッツアップペイは4億人の利用者を抱えるインドや1億2000万人のブラジルに加え、メキシコやインドネシアなどの新興市場で展開する方針だと語った。

さらに4月の決算発表では、インドの通信大手リライアンス・ジオへの出資がワッツアップペイの強化にどう結びつくのかについて詳しく説明した。ザッカーバーグ氏によると、ジオはインド国内の数百万に及ぶ零細事業者をオンラインでつなぐ構想を掲げている。これが実現すれば、ワッツアップは商品を見つけ、スムーズに決済できるデジタルプラットフォームになる機会を与えられる。

ワッツアップペイは当初インドでサービスを開始する予定だったが、6月にまずブラジルに参入した。ところがブラジルの中央銀行が競争上の懸念を示したため、サービス開始から1週間で停止を余儀なくされた。米誌フォーチュンによると、フェイスブックはブラジル中銀のデジタル通貨「PIX」の発行に「先回りした」とみなされたのだという。

アマゾン、決済機能を拡充しつつも一歩後退か

アマゾンの決済サービスは他の3社に比べると目立たないが、金融の世界ではおなじみの存在だ。この電子商取引(EC)大手は創業初期から取引業者に融資を提供している。

アマゾンは決済サービス「アマゾンペイ」のさらなる普及に取り組んでいる。アマゾンペイは今年、オランダの決済サービス会社アディエンの決済プラットフォームでも使えるようになった。一方、アマゾンは買い物客が零細商店でQRコードを使って商品を検索し、アマゾンペイで決済する「スマートストア」サービスをひっさげ、インドにも攻勢をかけている。このサービスは1万店以上で導入されており、豪アフターペイや米アファームのような後払いサービスと間接的に競合する無利子のクレジット「アマゾンペイ・レーター」も始まった。

さらに1月には米ビザと共同で、レジなし店「アマゾンゴー」と傘下の食品スーパー「ホールフーズ」で決済情報を買い物客の手のひらにリンクする「手かざし決済端末」の実証実験に乗り出したとされる。さらに米JPモルガン・チェースや米ウェルズ・ファーゴ、米シンクロニー・ファイナンシャルなどカード発行各社と消費者の口座のセキュリティーについて協議している。もっとも、決済処理各社はいずれアマゾンに対する影響力を失うのではないかと懸念しているとされる。

こうした活発な活動にもかかわらず、ニュースでアマゾンペイについて言及された回数は17年のサービス開始以降横ばいにとどまり、競合各社よりもはるかに少ない。

アマゾンペイ、ニュースの言及回数では他社に見劣り (15年4~6月期から20年4~6月期までのニュースでのGAFAの各決済サービスについての言及回数)

アップルペイ、スマホ決済をリード

アップルはおそらくGAFAのうち、ファイナンス事業で最も成功している企業だろう。同社が米国でアップルペイを開始したのは14年と早く、ニュースでの言及回数も他の3社をはるかに上回る。米調査会社イーマーケターの19年の推計では、米スマホ決済市場でのアップルペイのシェアは47.3%に上った。一方、グーグルの決済サービス「グーグルペイ」はわずか19%だった。

アップルペイは非接触決済のパイオニアでもある。新型コロナ危機を受けて、非接触決済への関心は急速に高まっている。

アップルが成功した主な理由は決済にいち早く参入した点と、米国のスマホ利用者の大部分に通知を送ることができる点にある。こうした利点を生かし、19年にはゴールドマン・サックスと共同で新型クレジットカード「アップルカード」の提供を開始した。このカードのデジタルインターフェースはアップルのモバイルアプリ「ウォレット」の個人資産管理ツールにひも付けされており、アップルペイで支払うとキャッシュバックを受けられる。

アップルは20年、アップルカードで購入した一定の自社製品を対象に、12カ月間無利子の分割払いサービスも導入した。3%のキャッシュバックも上乗せされる。アップルのティム・クックCEOは1月の決算発表で「バイナウ・ペイレーター(BNPL)後払い」と呼ばれる無利子の分割払いサービスを導入する計画をさらに進めていると明らかにしたが、それ以上の詳細については明言を避けた。

アップルの幹部が決算発表でアップルペイに言及した回数は19年には増えたが、20年に入り大幅に減っている。

アップルペイの言及回数、19年に増えたが次第に減少 (15年1~3月期から20年4~6月期のアップルの決算発表での「アップルペイ」への言及回数)

アップルは6月、アップルカードの申請を断られた人も信用力を高めることで金融サービスを受けられるようにするプログラムに乗り出した。融資の審査は透明性が欠けていることで有名だが、このプログラム「アップルカードへの道(Path To Apple Card)」は利用者への通知や個別のアドバイスで、将来カードの発行を承認される可能性を高める。利用者はプログラムへの参加から4カ月後に再申請を勧められる。

アップルの動きからは、同社が個人向け融資の拡充に関心を抱いていることがうかがえる。こうしたサービスは最終的にはアップルペイの「定着度」向上に役立つ。

グーグル、戦略練り直しとインドへの巨額の投資

グーグルペイの米市場でのシェアはわずか19%とアップルペイの後じんを拝している。もっとも米国外では急速に伸びており、米調査会社センサータワーのデータでは7月にはインドで最もダウンロード数の多い金融アプリになった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルペイは「あまり裕福ではないインドの消費者」向けに設計されており、ダウンロード数は1億8000万件に達している。

グーグルのスンダー・ピチャイCEOは2月の決算発表で、世界全域で決済サービスを改良する方針を明らかにした。グーグルペイは中国のスーパーアプリ「微信(ウィーチャット)」をモデルに改良され、企業がページを設けたり、利用者が新たなアプリをダウンロードしなくても決済したりできるようになる。

これは異色の戦略転換だ。アップルやアマゾンなどは決済専用プラットフォームになる道を選んだが、グーグルはフェイスブックや他の中国ネット勢のスーパーアプリと同様にフロー全体をアプリ内にとどめようとしている。問題は加盟店を確保できるかどうかだろう。

インドもグーグルペイ戦略の是非を占う試金石となる。ニュースでのインドとグーグルペイの言及回数はこの1年で急増した。アマゾンと同様にグーグルも6月、年内にグーグルペイの事業者向けアプリを通じてインドの商店に融資を提供すると発表した。

インド、グーグルペイ戦略の要に (15年1~3月期から20年4~6月期にニュースで「グーグルペイ」に言及した回数)

グーグルのフィンテック戦略では他の3社と同様に、スマートなインターフェースを構築して提携銀行にインフラ運営を認めるモデルをもっぱら活用している。もっとも、デビットと当座預金口座だけでは収益はかなり低い。生成されたデータから知見を引き出せる点に期待しているのだろう。

グーグルペイ戦略は、グーグルがインドを成長の原動力とみなしていることも浮き彫りにしている。同社は7月、(フェイスブックと同様に)リライアンス・ジオに45億ドルを出資する計画を発表した。さらに、今後5~7年でインドに100億ドルを投じる方針も明らかにした。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

業界:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン