「訪日客に長期滞在促せ」「消費税率引き下げは有効」
検証・中部とアベノミクス 新政権に望む(2)

2020/9/8 16:30
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■「地方は若者誘致継続を」 岐阜大学地域科学部・富樫幸一教授


岐阜大学地域科学部 富樫幸一教授

岐阜大学地域科学部 富樫幸一教授

 ――安倍政権下で中部の地方創生は進みましたか。
 「部分的には進んだ。ビザ発給の緩和など政府の観光振興により地方経済が活気づいた点は評価できる。岐阜県の世界文化遺産『白川郷』や三重県の『伊勢神宮』にはかつてないほどの訪日客が訪れ、各地でホテルの開発も進んだ」
 「地域おこし協力隊が広まり、地方へ移住したいという機運も高まった。岐阜県内でも郡上市などでは空き家を活用したカフェや旅館などが続々と生まれた」
 ――安倍政権が残した課題は。
 「出生率は停滞しており、都市部への人口流入も続いている。白川郷や伊勢神宮では観光客が密集するオーバーツーリズム(観光公害)なども問題になってきた。コロナ禍で観光客が急減した今が政策を見直すチャンスだ」
 ――具体的には。
 「観光においては量から質の転換だ。かつては団体で押し寄せた中国人客も目が肥え個人旅行を好むようになってきた。数値目標を掲げるのではなく、官民で付加価値を高める努力が必要だ」
 「長期間地域にいてもらう仕組みが必要になってくる。滞在中、ガイドをつけ地域の歴史や文化を体感してもらうのも1つの手だろう。雇用創出にもつながるほか、周辺地域へ訪れる機会も増え、過疎地域の経済活性化につながる可能性がある」
 ――都心部から若者を呼び戻すには。
 「積極的な誘致を続けるしかない。コロナ禍により幅広い業界でリモートワークの機運が高まっている。働く場としての魅力を高めれば定着する可能性はある。観光、介護業は身体的な負担が高く、若者の雇用の受け皿になりきれていなかった。国にできるのは各自治体の取り組みを財源というかたちで支えることだ」
 「テレワークなどネットを活用した生活はコロナ収束後もますます進展するだろう。コロナ禍をただやり過ごすだけでは地方の衰退は進むだけだ」
(聞き手は植田寛之)

■「輸出拡大へ自由貿易の推進願う」 OSG・石川則男社長


OSGの石川則男社長

OSGの石川則男社長

 ――約8年続いた安倍政権をどう振り返りますか。
 「短命が多かったこれまでの政権とは異なり、米トランプ大統領や独メルケル首相ら海外首脳と深い関係を築き、日本の存在感を高めた。経営者の立場で言えば、日経平均株価の上昇や為替の円安誘導で功績を残した点を評価したい。為替でいえば(政権発足した2012年末の)1ドル=80円台から106円前後にまで円安が進んだ。当社は海外で6割を稼ぎ、対ドルで1円円安になると約2億円利益が増える。為替が比較的安定していたのは事業計画を立てるうえでも良かった」
 「しかしアベノミクスで本当に好景気になったのかは疑問が残る。私は19年10月の消費増税は誤りだったと考える。インフレ懸念などの理由があれば別だが、米中摩擦が先鋭化し、経済指標や企業業績がダウントレンドになっていたときに実施し、消費が低迷した。民間と政府で経済の見方に温度差があり、経済再浮上のチャンスを潰したように感じる」
 ――新政権に何を求めますか。
 「コロナ対策は最優先課題で、財政支出は惜しむべきではない。相当厳しくなっている家計を救済するために、減税すべきではないか。法人税など手法はさまざまだが、低所得者が広く恩恵を受けるにはやはり消費税率の引き下げが有効だ。数年は5%程度に戻し、力強い景気回復を後押しすべきだ」
 「車をはじめとした耐久消費財で技術革新を伴った製品が生まれる環境づくりにも期待したい。日本の国際競争力を高めるには、こうした工業製品の存在は欠かせない。高い付加価値の機能やサービスがなければ価格勝負に陥るだけだ。製品の魅力が薄れ、デフレ懸念が強まれば、昔の日本に逆戻りしかねない」
 ――OSGとして競争力向上で要望はありますか。
 「グローバル企業としては自由貿易の推進を願う。当社は日本で6割生産し、輸出している。ある製品では日本からトルコに出す場合、25%の関税がかかるため、関税がゼロで済む欧州拠点で生産を始めた。これは政治や為替のリスクヘッジのために非常に重要で、アジアでもこうした地産地消を強化している」
(聞き手は角田康祐)
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