がん治療装置の治験へ、福島SiCが31億円調達
がん治療装置を開発する福島SiC応用技研(福島県楢葉町)は31億円を調達した。放射線を照射して脳腫瘍などのがんを治療する臨床試験機をこのほど開発。2021年後半から治験を行い、早期の実用化を目指す。

JPインベストメント(東京・千代田)やSMBCベンチャーキャピタル(東京・中央)など複数のベンチャーキャピタル(VC)が、福島SiCの第三者割当増資を引き受けた。
福島SiCが手掛けるのは放射線の一種である中性子線を使った「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」という治療法。中性子と反応しやすいホウ素薬剤を患者に投与してがん細胞に取り込ませ、そこに中性子線を照射することでがん細胞を破壊する。
BNCTは次世代のがん治療法として期待されているが、数メートルある加速器で中性子線を生み出す必要がある。装置や建屋が大型化し、導入費用が高額になっていることが課題だった。
福島SiCはSiC(シリコンカーバイド)半導体と呼ばれるパワー半導体を用いて中性子の発生源を約70センチメートルにまで小型化したことが特徴だ。福島SiCの石本学取締役は「装置全体を小型化できるほか、多方向から照射することで治療効果を高められる」と話す。小型化することで導入費用は20億円程度と、従来型の数分の一に下げられるという。
福島SiCの治療装置では患者の体を取り囲むように6方向から中性子線を照射する。これにより「正常な細胞を守りながら体の深い場所にあるがんに中性子線を当てられるようになる」(石本取締役)。BNCTは現在は脳腫瘍の治療に使われているが、同社の装置が実用化されれば膵臓(すいぞう)など幅広いがんの治療に活用できる可能性があるという。
このほど臨床試験機が完成。今回調達した資金で、21年後半から京都府立医科大学付属病院で予定する治験に向けた準備を進め、国内外で認証を取得することを目指す。
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