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大阪・高槻に古代のタイムカプセル 希少な未盗掘古墳

とことん調査隊

大阪府高槻市にある闘鶏山(つげやま)古墳(4世紀前半)で発掘計画の検討が進んでいる。注目されるのは、前期古墳では珍しい未盗掘である点だ。未盗掘古墳は調査のたびに数々の大発見が話題となってきた千数百年前のタイムカプセル。なぜ長年、盗掘を免れることができたのか、次代にいかに継承するか探った。

名神高速道路が東西に走る高槻市郊外の小高い尾根の上に闘鶏山古墳はある。全長約88メートルの前方後円墳だが墳丘はシートで覆われ、立ち入り禁止になっている。

同市立埋蔵文化財調査センターを訪ね、鐘ケ江一朗所長に話を聞いた。同古墳で2つの石槨(せっかく、石室)が見つかったのは2002年。宅地造成に先だって試掘したところ石槨が現れ、石の隙間からファイバースコープを差し込むと、三角縁神獣鏡などが手つかずで眠る姿を映し出したという。同年のうちに国史跡に指定され、保全されている。

現在は内部にセンサーを差し込み、温湿度や大気成分の変化を観察。小型カメラを挿入して撮影調査も3回行った。最新画像を見せてもらった。第1石槨は板石をずらしながら屋根形に積む「合掌形」の天井を持つ。石がせり上がる迫力に思わず息をのんだ。

未盗掘古墳について詳しく知るため、兵庫県立考古博物館を訪ねた。古墳研究で著名な和田晴吾館長が闘鶏山古墳について「合掌形の石槨は地震などで崩れやすい。壊れず完全に残っている点で特に貴重だ」と教えてくれた。

古墳は3~7世紀ごろ築かれ全国に約16万基が知られるが、盗掘されたり墳丘ごと姿を消したりした例は多い。そんな中、幸運にも盗掘を免れた事情は様々で、小さな古墳は盗掘者が見落としやすかったという。「地域差も大きい。山城地域(現在の京都府南部)は盗掘集団がおり未盗掘はまれだが、残りのよい地方もある」と和田館長は話す。

近年の代表例があると聞いて奈良県立橿原考古学研究所付属博物館(同県橿原市)に向かったが改修休館中。調査報告書などをひもといた。1988年、未盗掘の石棺から金色の履(くつ)など豪華な副葬品が見つかった藤ノ木古墳(同斑鳩町、6世紀後半)は石室で長年供養した跡があり、近くの寺が守っていたようだ。97~99年、銅鏡34枚などが出土した黒塚古墳(同天理市、3世紀後半)は一部盗掘されていたが天井が崩れ大量の石で石槨が埋まっており、盗掘者が途中で諦めたらしい。

闘鶏山古墳はどうか。鐘ケ江所長は「埴輪(はにわ)が出土せず、石槨が見つかって初めて古墳と確認された」と話す。盗掘者が気付かなくても不思議ではないかもしれない。近くに神社があり、神域として守られたとの見方もある。

発掘といえど遺構を破壊するのだから実施は慎重に、というのが近年の考え方だ。なぜ保全から発掘へかじが切られたのか。鐘ケ江所長によると発掘計画は2年前から本格化した。「現状維持と発掘の長所短所を比較し、発掘がベターと判断された」。内部に雨水が浸入し、石材や遺物の劣化が進んでいるという。地震の影響も心配だ。

文化庁の許可を得るには綿密な計画と万全の準備が必要で、実物大模型やデジタル画像を基にした3Dモデルを制作して、シミュレーションを念入りに進めている。「発掘費は相当な額になる。市民の理解を得るためにも貴重な遺物と石槨の情報をできるだけくみ取り、活用と保存まで視野に入れて計画を練る必要がある」と鐘ケ江所長は語る。

着手は2022年度以降になりそうだ。和田館長は「古墳研究に新たな視点をもたらす調査を行い、未盗掘古墳の持つ可能性を最大限に広げてほしい」と期待する。約1700年ぶりに光を浴びる古代遺産は何を物語るのだろう。

(編集委員 竹内義治)

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