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東京ベイにホテル続々 五輪延期で戦略見直しも

2020/9/9 5:30
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東京五輪・パラリンピックの競技会場が集まる東京湾岸で、都市型ホテルの開業が相次いでいる。大会の運営は1964年大会でも使われた代々木競技場などの遺産を生かす「ヘリテッジゾーン」と湾岸の「東京ベイゾーン」が2本柱。湾岸エリアは開催都市・東京の未来を象徴する場所だが、1年延期になった五輪をめぐり、ホテル関係者の中では開催を期待する声と冷静に判断する声が交錯している。

「私見だが、東京五輪は絶対に開催すべきだ」。9月1日の東京ベイ潮見プリンスホテル(東京・江東)の開業式典で、プリンスホテルを傘下に持つ西武ホールディングス(HD)の後藤高志社長はこう力説した。

新ホテルはJR京葉線の潮見駅前に立地し、競泳などの会場となる東京アクアティクスセンターからも近い。東京五輪に合わせる格好で今年7月に開業する当初計画は、新型コロナウイルスなどの影響を受けて変更を余儀なくされたものの、東京ベイゾーンに立地するホテルとしての優位性をアピールする思惑もあってか、五輪への期待が大きいようだ。

もともと西武HDは五輪との関係が深い。西武グループ総帥だった堤義明氏は初代日本オリンピック委員会(JOC)会長を務め、長野五輪開催にも力を発揮。今回の東京五輪でも大会組織委員会特別顧問となっている。

現在、西武HDは五輪に直接関わっていないが、コロナ禍でのスポーツ観戦でアイデアを出している。プリンスホテルに観客席仕様の客室を用意し、プロ野球埼玉西武ライオンズの試合を応援できるようにしたサービスを始めたのだ。新宿、池袋、川越にある3ホテルで応援する観客はビデオ会議システムでつながっており、テレビ観戦ではあるものの、ファン同士が一体感に包まれながら応援できるという。

こうした観戦について、西武HDは「来年の東京五輪でも可能性があるのではないか」と話しており、ウィズコロナの五輪の新しい観戦スタイルとして提案していく動きもありそうだ。

8月に開業したホテルヴィラフォンテーヌグランド東京有明(東京都江東区)

8月に開業したホテルヴィラフォンテーヌグランド東京有明(東京都江東区)

競技会場が集積する東京ベイゾーンの中核、江東区有明。住友不動産はテニス会場となる有明テニスの森の真向かいに、ホテルヴィラフォンテーヌグランド東京有明を8月1日に開業した。6月に開業する予定は変わってしまったが、周辺には有明アリーナ、有明体操競技場、有明アーバンスポーツパークなどの競技会場がある。来夏の東京五輪が実現すれば、注目されそうだ。

ただ住友不動産は「東京五輪は一過性のもの」と冷静に受け止めている。大会は観客数が削減される可能性もあり、五輪特需は期待できないとの読みがありそうだ。むしろ、大型ショッピングモール、多目的ホールなどの複合施設である「有明ガーデン」内のホテルという強みを生かしながら、中長期的に需要を掘り起こしていく戦略を重視する。

三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロスの36階ロビーからは東京湾岸が一望できる(東京都江東区)

三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロスの36階ロビーからは東京湾岸が一望できる(東京都江東区)

8月10日にオープンした三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロス(東京・江東)も五輪需要だけでなく、銀座まで約10分という利便性を売り込み集客を図る考えだ。ホテルが立地する豊洲は、選手村がある晴海と競技会場が集まる有明の中間地点。36階(高さ165メートル)のロビーでは「こっちが有明で、右に見えるのが選手村だね」などと、景色を楽しむ利用客の姿が目立つ。今後、東京湾の眺望も積極的にPRしていくという。

■前年同月比70ポイント下落

ホテル専門の英調査会社STRによると、都内のホテルの7月の稼働率は前月比2.4ポイント上昇して17.0%だった。底入れはしたもようだが、前年同月と比べると70.7ポイント下落しており「多少改善したにしても厳しすぎる」(ホテルに投資する不動産会社首脳)と悲鳴にも似た声が漏れる。みずほ総合研究所は「感染予防のために宿泊者の密集を避ける必要があり、コロナ禍前ほど稼働率を上げることは難しい。売上高のV字回復は見込めず、L字型に近い底入れにとどまる」(経済調査部)と分析する。

足元の業績は厳しい。西武HDの20年4~6月期連結決算をみると287億円の最終赤字。ホテルだけでなく鉄道の客足が鈍ったことも響いた。三井不動産は4~6月期にホテルを含む「その他事業」が101億円の営業赤字になっている。インバウンド(訪日外国人)需要の回復見通しも「いつになるのかを理論的に言うことはできない」(西武HDの後藤社長)と読み切れない。

ホテル各社は宿泊以外でも様々に知恵を絞っている。例えば、プリンスホテルは9月、立食でのビュッフェ形式の宴会を、ワゴンで料理を客席に運ぶ方式に改めた。ワゴンにもテーブルにもアクリル板を設置して感染対策を徹底しており、宴会需要の掘り起こしを急いでいる。

東京湾岸は将来も都市開発が加速する勢いだ。都心と有明をつなぐ都道の環二通りは五輪後に上下4車線で全線開通する予定。銀座から有明までを地下鉄で結ぶ構想や、地下鉄8号線(有楽町線)の豊洲―住吉間延伸計画もある。15年に人口14万5000人だった湾岸エリアは、30年には6割増の23万6000人になるとの予測もある。

各ホテルは東京湾岸の魅力をアピールする力に加え、オリパラ延期で狂った戦略を練り直す修正力も問われている。

(山根昭、近藤康介)

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