北大発スタートアップ全国13位、新支援体制で巻き返し
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2020/9/7 12:18
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北海道大学発スタートアップは企業数が伸び悩んでいる。2019年度は48社と全国の大学の中で13位にとどまり、旧7帝大では最下位に沈んだ。起業の低迷は大学経営にも影響を与えかねない。北大は研究成果の事業化につなげる体制作りを計画するなど創業支援の強化に乗り出した。

AIカメラが来店客を識別する(札幌市内のサッポロドラッグストアー)

AIカメラが来店客を識別する(札幌市内のサッポロドラッグストアー)

経済産業省がまとめた全国の大学発スタートアップ数の調査では、19年度の首位は東京大学(268社)だった。京都大学(191社)や大阪大学(141社)が続くなど、トップ5は旧帝大が占めた。

16年度に9位だった北大は17年度以降、トップ10から外れた。国の特別な支援対象になる「指定国立大学」を狙う上で必要なスタートアップ育成や産学連携の実績が足りず、底上げが急務だ。

企業数では他大学に見劣りするが、北大スタートアップは粒ぞろいでもある。「初音ミク」を開発したクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)がその1つ。北大の強いバイオや農業分野を磨く企業も多い。

ただ、課題は北大に起業を支える仕組みや環境が不十分なことだ。東大や京大などは学内にベンチャーキャピタル(VC)を設け、スタートアップの資金調達を支援する。創業・雇用分野で国家戦略特区の指定を受ける福岡市は高島宗一郎市長が先導し、スタートアップの法人市民税を減らすなどの政策を打ち出す。

産学連携の強化も必要だ。スタートアップを支援する北大の川村秀憲教授は「道内の大手企業がスタートアップの技術や商品を生かせる場を広げてほしい」と訴える。

サツドラホールディングスの店舗で来店客を識別する実験に、北大発スタートアップのAWL(アウル、東京・千代田)が開発した人工知能(AI)カメラが採用されたのが好例だ。川村教授は「起業家にとって実践の場が技術を磨く好機になっている」と指摘する。

北大は学内の研究成果の事業化に向けた支援に力を入れる。北大の産学・地域協働推進機構は15年、創業を目指す教員の相談を受け付ける「創業デスク」を立ち上げた。16年には北大発スタートアップであるとのお墨付きを与える認定制度を導入。現時点で24社が認定を受けている。

このうちの1社で、AIを強みとする調和技研(札幌市)は大学の認定を評価する。スタートアップは出自が分かりにくく、顧客や取引先とのやり取りに時間がかかることがある。「大学の認定があることで生い立ちを伝えやすく、スムーズに進む」(同社)という。

北大の担当職員は「優れた研究成果があっても、ビジネス需要に応えるにはさらに支援が必要だ」と話す。このため、大学の研究成果を事業化しやすくする新たな支援体制を21年度をめどに、学内に整備する。

北大の次期学長予定者に決まった宝金清博特任教授は、指定国立大学入りを目指す。北大が稼ぐ力をつける上でも、スタートアップ育成は欠かせない。

(塩崎健太郎)

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