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楽天・涌井、移籍で心機一転 新球種で投球に幅

2020/9/8 3:00
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楽天の投手陣の柱となり、リーグトップの8勝を挙げている涌井=共同

楽天の投手陣の柱となり、リーグトップの8勝を挙げている涌井=共同

プロ野球パ・リーグの上位争いに食らいついている楽天。いま投手陣の中心を支えているのが34歳の涌井秀章だ。8勝(1敗)、防御率2.43はともにリーグトップ。新しい球種で投球の幅が広がり、精神的にもロッテからの移籍がプラスに働いている。チームの勢いに陰りが出てきている中、涌井には最後まで柱としての活躍が期待される。(記録は7日現在)

開幕が3カ月ほど遅れた今シーズン。6~7月の月間MVPに選ばれた。この間、涌井は負けなしの5勝、防御率2.89だから文句なしの受賞だった。記者会見でははぐらかすような表情で「調整期間にやってきたことがよかったのかなあ。改めて練習って大事だなと思った」。

新型コロナウイルスの感染拡大で開幕前、楽天は選手の球団施設利用を厳しく制限したが、涌井はその間も走り込みを続けていたのだろう。試合前、打撃練習を遠目に黙々と外野を走っている、現在と同じように。

好調の原因を「今季はストライクを取るのに苦労していない。カウントが不利になってもストライクがとれる」と分析する。走り込みで培った下半身が安定したフォームと制球力につながっている。体の切れもよく、球速も昨年までより上がっている印象だ。今季、74回で71個と投球イニングに迫る三振を奪えているのは、真っすぐに力があるからだろう。

涌井は6、7月の月間MVPを受賞(楽天球団提供)=共同

涌井は6、7月の月間MVPを受賞(楽天球団提供)=共同

さらに今季から使い始めたシンカーが効果的だという。「キーになる球。もっと精度を上げていろんな使い方をしたい」と手応えを語る。移籍を機に、楽天での現役時代に持ち球として多用していた小山伸一郎投手コーチに教えを請うた。春のキャンプで投げてみると「小山さんも上々の反応で、自分でも『こりゃいけるぞ』と」。小山コーチのシンカー、通称「こやシン」と名付けた。

重要なのは「ベース上で球を動かすこと」だ。バットの芯を外して、凡打に打ち取ったり、ファウルでカウントを稼いだりできるのだとか。着手から半年足らずで新しい球種を使いこなせるのは、涌井の投手としての能力の高さゆえだろうが。

過去に3度も最多勝を手にしていながら、なお新しい取り組みに挑んだのは、昨季の雪辱への思いからだろう。昨季は3勝7敗、規定投球回に届かない104イニングにとどまった。そんな中での金銭トレードによる楽天への移籍はメンタル面にも好影響を与えた。

月間MVP受賞時、「楽天に来て、必要とされているなと感じた。やりがいを感じながら投げている」と語り、さらにタクシーに乗った際に「『(仙台に)来てくれてありがとう』と言われて……。まさか運転手さんに言われるとは」とエピソードも明かした。直接触れたファンの声に、あらためて勤務地が変わったことのプラス面を実感したようだ。

ここまでのハイライトは、月間MVPが決まる直前の8月5日だった。首位を争うソフトバンクを、九回1死まで無安打に封じ込んだ。代打川島慶三に中前打を許したが、気を緩めることなく後続を連続三振で抑えた。最近は先発投手の成績を評価するとき、クオリティースタート(QS、6イニング以上で自責点3以下)という用語が使われるが、涌井がこだわるのはあくまで「先発完投」。この132球での1安打完封はまさに面目躍如だった。

三木監督(右)は涌井に対して「頼れる投手」と絶大な信頼を寄せる=共同

三木監督(右)は涌井に対して「頼れる投手」と絶大な信頼を寄せる=共同

8月26日のロッテ戦で味方の援護がなく0-2で敗れ、開幕からの連勝が8で止まったが、その試合も含め、今季はほぼコンスタントにQSをクリアしている。表情を変えず、黙々とマウンドを守る姿はベンチにも頼もしく映るようで、三木肇監督は「チームとしてなかなかペースがつかめないときでも、一切気にすることなく、逆にそれを力に変えて結果にもつなげている。いろんな経験がある、(投手として)引き出しの多い頼れる投手」と絶大な信頼を口にする。

通常のシーズンより少ないとはいえ、各チーム120試合はなかなかの長丁場だ。火曜から日曜までひたすら6連戦が続く日程は、選手により重い負担を強いている。楽天の先発陣も当初思い描いていたようには進んでいない。今季、抑えから先発に転向した松井裕樹は一時不振で1軍を離れ、石橋良太、弓削隼人らは現在2軍で調整中だ。実績十分の岸孝之も復調に手間取っている中、開幕投手の則本昂大までが右手のケガで9月5日に出場選手登録抹消となった。

残り50試合あまり、先発ローテーションのやりくりに監督、投手コーチが頭を悩ませる中、最低6~7回を常に任せられる涌井の存在はさぞ心強いことだろう。

(土田昌隆)

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