渡辺雄太、確かな成長の跡 NBA3年目はあるか
スポーツライター 杉浦大介
"飛躍の2年目"とは言い切れなかったのだろう。8月19日(日本時間)、今季最後のリモート会見に臨んだ渡辺雄太(メンフィス・グリズリーズ)の口ぶりからは、米プロバスケットボールNBAで思うように力が発揮できなかったという悔しさがにじみ出ていた。

「自信もつきましたし、高いレベルでやっていけると再確認できました。ただ、それ以上に正直、悔しい気持ちが残ったシーズンでした」
今季の渡辺は18試合に出場。平均5.8分プレーし、2.0得点、1.5リバウンドを記録した。前シーズンに比べ試合数こそ増えたものの、プレー時間、得点、リバウンドなどは総じてダウン。リーグ新人王を獲得したジャ・モラント、同投票で4位に入ったブランドン・クラークをはじめ、多くの若手が芽を出したチーム内で役割を確立するには至らなかった。
結果として、グリズリーズとのツーウェイ契約の期間で、目標に掲げてきた悲願の本契約ゲットはかなわなかった。NBAで長くプレーしていく選手は1~2年目に大きな成長を示すことが多いだけに、それができなかったことで、渡辺は現時点での力不足を自覚させられたのかもしれない。
■下部リーグでは堂々たる成績も
「(NBA下部の育成リーグである)Gリーグではほとんど文句のない活躍ができたと思うんですけど、NBAでは自分の足りないところも痛感しました。コロナもありましたし、それも含めて大変な、悔しい思いをしたシーズンでもあったかなと思っています」
ただ、そんな本人の言葉にもあるように、希望が持てる要素がないわけではない。今季の渡辺はGリーグ、メンフィス・ハッスルでは、プレーした22試合すべてでスタメン出場し、平均17.2得点、5.7リバウンド、2.2アシスト、1.0ブロックという堂々たる数字をマークした。特にFG(フィールドゴール)成功率は前年の43.4%から54.2%に、3ポイントシュートの成功率も同33.3%から36.4%にアップしたのが目を引く。
また、NBAでの成績を掘り下げても、サンプル自体は少ないとはいえ、鍵の1つであるFG成功率は前年の29.4%から44.1%に、3ポイントシュート成功率も同12.5%から37.5%に大きく向上している。
これらの数字は渡辺の力量が、米国でもプロバスケットボール選手として十分に通用すること、そして、NBAでのプレー時間獲得の条件と見られてきた、遠めからのロングジャンパーの精度にも確実な進歩が見られることを示している。だとすれば、今後のカギは、マイナーリーグでやってきたことをNBAのステージでどれだけ安定した形で発揮できるか、という部分になってくるのだろう。
渡辺とグリズリーズの契約は今季で満了し、プロ3年目の来季は新たなチームの一員としてシーズンに臨むことになる可能性が高い。終わりが見えないパンデミックの中では来季がいつ開始されるかもわからない状況だが、渡辺の去就には注目が集まる。もう本当に後がないシーズンに向けて、その多才なプレーと、25歳ながら依然として伸びしろを残している点に期待するチームが現れるかどうか。厳しい2年間で少しずつ力をつけてきた渡辺に、"三度目の正直"への道が開かれることを期待したい。