中印、衝突後初の国防相会談も平行線 係争地巡り

【北京=羽田野主、馬場燃】中国の魏鳳和国防相とインドのシン国防相は4日、モスクワで会談した。6月中旬に中印両軍が国境地帯で衝突して双方に死傷者が出て以来、国防相同士が会談するのは初めて。緊張緩和に向けて協議したが平行線に終わった。
両国防相はモスクワで開いた上海協力機構(SCO)メンバー国の会議に参加したのに合わせて会談した。係争地域に集まる両軍の兵士は計10万人規模に膨らんでいるとの指摘がある。中国メディアによると、9月10日に中印外相会談を開く可能性がある。
中国国防省の発表によると、魏氏は「国境地帯で緊張が高まった責任は完全にインド側にある」と主張。「中国の領土は一寸たりとも失うことはできない」と強調した。
魏氏は「双方が大局を見据えて歩み寄り、早く事態を緩和させ、国境地域の平和と安定を守るべきだ」と事態収拾も呼びかけた。シン氏も「双方が早期に一線部隊を全面的に離脱させ、両国・両軍関係を正常な道に戻すことを希望する」と応じたというが、緊張緩和への道筋は示せなかった。
両軍のにらみ合いは5月初旬からインド北部の山岳地帯のラダック地方の数カ所で続く。6月の衝突ではインド側に1975年以来となる死者20人が出た。中国側も死傷者が出たとしているが人数を明かしていない。
中国共産党系メディアの環球時報は5日の社説で「中国の軍事力を含む国力はインドよりはるかに勝っている」と強調した。「いったん開戦になればインドに全く勝ち目はない」と主張した。中国内でインドへの反発が強まるにつれて、軍もメディアもインドへの非難を強めている構図だ。
インドのシン国防相は5日、ツイッターで「中国の魏国防相とモスクワで会談した」とだけ短く明かした。インド政府は両者の会談が2時間20分に及んだとしている。インドメディアによると、シン氏は中国の人民解放軍がラダック地方で新たな侵入を試みたことについて強く非難した。
インド政府は8月29日から31日の間に、中国軍がラダック地方の湖パンゴン・ツォの南岸に入り挑発的な行為に及んだと批判している。シン氏は国境の実効支配線を順守するよう主張したとみられる。インドメディアによると、インド軍は8月末の中国との小競り合いを踏まえ、兵士を係争地域で増員している。