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薬害を起こさない文化を 再発防止願う

佐藤嗣道さん(4)いしずえ(サリドマイド福祉センター)理事長

薬害の被害を受けて生まれたことは、私自身の仕事にも影響を与えた。大学に入るときは分子生物学に興味があり、それなら薬学部がいいと勧められて進学したが、薬に関わるのは嫌だった。しかし、サリドマイド事件以後も、多くの薬害が発生していることを知り、この問題に向き合わざるを得なかった。

さとう・つぐみち 1962年、サリドマイド薬害により手に障害をもって生まれる。北海道大薬学部卒。東京医科歯科大大学院修了。博士(医学)。医薬品の安全性を高める研究に従事しつつ被害者の福祉のため活動。現在、東京理科大講師。2008年から現職。

大学院の博士課程では、薬の社会的側面を研究する社会薬学と、薬の安全性を疫学の手法で評価する薬剤疫学に取り組んだ。その後も大学で研究者の道を歩むことになった。

「いしずえ」でも、薬害防止は重要な事業の一つである。30歳を過ぎたころ、ブラジルで再びサリドマイドが使われ、新たな被害が起きていることを知った。この薬がハンセン病の症状緩和に効果があることが分かり、1965年に復活していたのである。以後、120人以上の被害児がブラジルで生まれた。

99年には多発性骨髄腫に効果があることが報告され、この薬が世界的に使われるようになった。日本では、サリドマイドの個人輸入が問題となった。安全管理を求める要望書を厚生労働省に提出し、個人輸入によるサリドマイドの管理システム構築につながった。

2008年にサリドマイド剤が日本で再び承認される際には、被害の再発防止のためのリスク管理システムを検討する厚労省の検討会委員として意見を述べた。現在はこのシステムの第三者評価委員会の一員として意見を述べ、必要に応じていしずえから要望書を提出している。

新型コロナウイルスの治療薬がスピード承認されているが、重大な副作用が起きないか、注意深いモニターが必要である。効果の検証が続く「アビガン」は動物実験で胎児に奇形を起こすことが報告されており、服用した男性の精液中からも薬の成分が検出される。服用の際は危険性を認識し、使用中と終了後(女性14日間、男性10日間)は性交渉を控えるなどの行動を取ることが必要である。

医薬品は社会的財産であると思っている。せっかく世に出た薬が重大な健康被害を起こして販売中止になっては、誰も幸せにならない。薬はリスクであり、行政、企業、医療の場に薬害を起こさない文化が根づくことを願っている。(この項おわり)

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